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共通テストに備えて~読解力を養成する指導が重要~ - 新里 将平(世界史)

世界史講師  新里 将平

― 2020年のセンター試験はどうでしたか。

  • インタビュー風景教科書の記載事項を問う内容の出題という点では例年と大きな違いはありません。但し、近現代については戦後史から集中して出題されていました。戦後史に十分な時間を割くことができなかった受験生はかなり苦戦したと思われます。また、2000年代のセンター世界史では、文化史の配点は10点程度でしたが2019年、2020年と連続して20点ほどの配点でした。やはり生徒の勉強のメインは通史、その後に文化史です。基礎的な内容でしたが生徒にとっては厳しかったと思います。以上の2点が影響して生徒にとっては難しく感じたのではないかと思います。対策が手薄になりがちな部分も重要なので、きちんと勉強してほしいという大学入試センターの考えを反映したものかもしれません。
    2020年のセンター試験に「新生活運動」という見慣れない単語が登場しました。過去の入試問題ではあまり見ない語句ですが、東京書籍・帝国書院・実教出版の教科書では使われています。特に最近の私立大学は出題ミスを防止するために教科書や資料集の表現をそのまま採用したと思われる出題が多いので、教科書を読み込むことは大学入試全般の対策として機能します。しかし、教科書は前提となる説明を大きく省略し史実を整理しています。生徒が自力で読むよりは、授業後の復習として読ませる方が良いでしょう。
    私は論述指導の際に教科書を読みながら書くように指示することもあります。設問が読み込めていない、教科書から必要な情報を探せないなど、教科書を見ながらでも生徒は意外と書けません。教科書を見ても書けない原因を追究することで、生徒の弱点が浮き彫りになります。ある出来事について原因と結果を教科書から探させる、教科書20ページほどの範囲を指定して、ある出来事についての説明が記載されている部分を抜き出す、などの課題を出してみるのも良いかもしれません。

― 2021年1月に第1回大学入学共通テストが実施されます。先生はどのようにお考えですか。

  • まず試行調査問題を分析します。従来のセンター試験と比較して設問が劇的に多様化しています。絵やグラフ、史料など様々な視覚資料が登場し、シチュエーションも人物同士の会話形式にするなど、非常に手間をかけて作りこまれています。
    しかし、問われている内容そのものについてはセンター試験と試行調査問題でほとんど変化はありません。従って教科書の内容をきちんと勉強し理解することが大切になります。
    また文章を読む力の養成も大切です。世界史に限りませんが共通テストでは資料を読み込み与えられた情報を分析した上で、知識と照らし合わせて解答する状況が増えると考えられます。文章をきちんと読むことが出来なくては力を発揮することもできません。最近の高校生はLINEやTwitterをよく使うので短文がコミュニケーションの中心になりがちです。長い文章を読むことを億劫に感じ、字面を追うことはできても中身が頭に入っていない場合もあると思います。
    特にスマホが普及してから状況が大きく変化したと感じています。生徒に何かを調べるように指示すると、まずGoogleにアクセスする生徒をよくみかけます。そして膨大な検索結果の中から情報を選別できず、結果的に生徒の中にはインパクトの強い単語や表現だけが残り、「調べたけどわからない」という状況になってしまいます。自分で調べ、内容をよく理解して自分の言葉に落とし込む。まずはこうした基本的なことがきちんとできるようになってほしいと感じます。
    私はこれまで一問一答形式に近い小テストをしていましたが、今後は設問文を長くして最後まで読めた生徒が正答できる小テストに変更する予定です。また、上述のように教科書の活用も有効でしょう。生徒にとって一番身近で少しわかりにくい文章は教科書の文章です。

― 今春(2020年春)からの指導について、何か例年から変更する予定はありますか。

  • インタビュー風景大きな変化はありませんが、歴史的事実を可能な限り抽象化し、他の地域や時代に似た事例がないか生徒に問いかけつつ授業を進めたいと考えています。先日公開された「令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針」にも「個別の事実等に関する知識のみならず、歴史的事象の意味や意義、特⾊や相互の関連等について、総合的に考察する⼒を求める」とあります。
    「この時の反乱は宗教徒(宗教結社)が起こしたものだった。こういった反乱が発生する要因は何だろうか。そして、他の時代や同時期の別の地域には似たような事例はなかっただろうか。」というように生徒に考えさせることで、歴史的な事実を比較する視野を身につけてほしいと考えています。
    数学が苦手で文系を選択している生徒はグラフなど数値を含む問題に対して嫌悪感を示すケースがあります。しかし共通テストではグラフの読解問題の出題が予測されますから「何のグラフか示す⇒グラフの変化の特徴を歴史と関連付ける」の順で授業中に扱い、グラフに接する機会を増やしていきたいと思います。初見の視覚資料も同様ですが、取り組んだことがない・見たことがないというのは、生徒たちにとっては非常に衝撃的に感じられるようです。焦りや不安から実力を発揮できず、落ち着けば解答できる問題でも失点してしまいます。授業で新傾向の問題を経験させ、自信をつけてもらいたいと考えています。史料については岩波書店の世界史史料シリーズがお薦めです。体系的に整理されていますので、授業内容に関連したものを選び考査で出題するのはいかがでしょうか。

― 直前期の指導についてもお願いします。

  • 繰り返しになりますが、センター試験に向けた指導から大きな変化はありません。センター試験の過去問演習は今年も行います。その上で、生徒が頻繁に間違えた所の覚えなおしを徹底させようと思います。それでも不安な生徒には、市販の対策問題集で練習させるのも良いでしょう。
    また、2次試験の問題をアレンジすることで共通テスト対策の教材を作ることができます。例年、東大の第3問は文章を読み込んで判断させる問題です。九州大や東京外国語大、慶応義塾大の経済学部では資料やグラフがよく出題されます。図版は上智大、写真は早稲田大の文化構想学部の入試でよく扱われます。難関大学が多いですが、ヒントをつける、論述問題を4択問題にするなど工夫をすれば共通テスト対策として十分に機能します。

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聞き手:吉岡