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クラスの雰囲気づくりと生徒への安心感 英文暗唱の導入でモチベーションアップ - 吉村 和明(英語)

英語講師  吉村 和明

― 生徒のモチベーションを高めるために授業中に行っている取り組みにはどのようなものがありますか?

  • 大きく分けて2つあります。1つは期待を持たせる方法です。「大学に行きたい」という気持ちを持ってもらうために、自分が大学時代こんなに楽しかったという話を授業の初回にするようにしています。また、英語に関して言えば、「英語が話せたり、理解できたりするのはとてもかっこいいことだ」と冗談も交えながら話して聞かせることがあります。様々な言語で歌われている歌を聞き比べてみると、僕個人としては英語の音が一番かっこよく感じますので、そんな話もします。その他には、2020年の東京オリンピックで海外からたくさんの人が日本に来るので、大学に行っても英語一つできないというのでは困る、授業で使える英語を覚えましょう、などと最初の段階で言うようにしています。

    もう1つの方法は、達成感を持たせることです。英語はその日学習したことがすぐに模擬試験の得点に結びつくわけではないため、この点は最初に覚悟をさせるようにしています。その上で、学習の成果を実感させるため「習ったことができるようになった」ということを何らかの形で示し、できるようになった実感を生徒に与えるようにしています。「今はまだなかなか点数には結びついていないけれど、ちゃんと実力はついているんだよ」ということを伝えて、達成感や安心感を与え、生徒のモチベーションを切らさないように心掛けています。

― 生徒のモチベーション向上という点において、授業中にうまくいった方法、逆にうまくいかなかったものなどはありますか?

  • インタビュー風景 今年度の授業では、生徒との距離を縮めて話しかけやすい雰囲気を作り出すようにしました。これは割とうまくいったと思います。以前は、「質問に来させないことが講師の力量だ」と思っていましたが、今年はそれを変えて、講師室に来させるようにしました。相手がどんな人間かを知っていた方がお互いやりやすくなるとも思います。英作文の添削をしたり、ちょっとした課題を与えたりした際にも、講師室に直接取りに来てもらうようにしました。返却時に一言コメントを付け加えられるため、ただ赤入れしたものを渡すだけよりは、こちらの意図も通じやすくなり有効です。また、返却時にちょっとした雑談もできます。生徒も話したがっていることが多いため、こうしたちょっとしたコミュニケーションを普段からとっておくことで、生徒が苦しくなった時にも相談に来やすくなると思います。

    また、クラスの雰囲気を良くしておくために、クラス全体に連帯感を持たせるような工夫も行っています。同じクラスを一つのチームとして、全国の他予備校や他のクラス、他の校舎を敵にするような口調で「他に負けるな」と競わせるようにしたりします。同じクラスの個人対個人を競わせるよりも、こうしたクラスを一つのチームとする方法のほうが、クラス全体の雰囲気は良くなり、うまくいくように感じます。

    逆に、過去にうまくいかなかったのは、叱り方です。ムキになって正論で叱りつけて逃げ道を与えなかった場合には、生徒のモチベーションには繋がっていかず、挫折感だけを与えてしまったと感じています。今の生徒には、できないことを実感させることで「なにくそ」と思わせることは難しいかもしれません。「できない→ごめんなさい→諦めます」という流れになってしまう生徒が多い気がします。昔の生徒はできないことを実感させようとすると「お前ごときにそんなこと言われたくない」という反発のされ方が多かったのですが、今は逃げられてしまうと言うか。いずれにしても、僕の経験では厳しく責めてもあまりうまくはいきませんでした。叱り方が上手だと感じる先生の中には、「お前それじゃだめだろ(笑)」等と言いながら、笑いにしてしまっている方がいます。この方法は一つ有効かもしれません。生徒本人も苦笑いしながら「すいません」という感じになるため、モチベーションを維持するという点においては、うまくいっているような気がします。

― 生徒のモチベーションアップのためにどんな工夫をしていますか?

  • これは先生のキャラクターにもよると思うのですが、もし英語が苦手な生徒さんが多く、もともと「先生だから英語ができるんでしょ」などの距離感を持たれているクラスの場合には、自身の受験時代のちょっとした失敗談などは生徒との距離を縮めてくれると感じます。「今の生徒は情報しか求めていない」という意見もあるのですが、情報を与えるだけではなくやはり人間として親しみを感じられる方が生徒にとっても接しやすいと思います。ただし、成功談をする際には注意が必要です。うまく伝えないと単なる自慢話、「あなたは英語が得意だからできるのだ」と、生徒と逆に距離が生まれてしまいます。ユーモアを入れて、冗談っぽい口調で話したりすることで、距離をもたれないようになると思います。ただやはり、教える側が楽しいという気持ちで生徒に接することが一番伝わるのではないかと思います。教える側がつまらなそうに義務感でやっているのでは、なかなか生徒には伝わらないと思います。あ、これはモチベーションというテーマからは少し外れて、生徒との接し方についての話になってしまいましたね…(笑)

― 生徒のモチベーションには時期によっても違いがありますか?

  • 1学期の6月、2学期の11月などは疲労のせいでクラスの雰囲気が重たくなることがあります。今年は「2学期になってまさかと思うだろうけど、意外と11月くらいにだらけることが多いから注意しろよ」と2学期の最初に言っていたせいか、モチベーションの下がる生徒は少なかったように感じます。事前に言われることで、生徒は「自分はならないぞ!」と思うようです。どちらかというと真面目な生徒の方が、こうしたモチベーションの低下に陥りやすいと感じます。やはり模擬試験の得点に結びつかない時などに不安を感じるのだと思います。こうした生徒は直接相談に来てくれることが多いため、「自分は味方なんだ」ということを分からせて、生徒が情けないことを言った時にもそれを否定せず、受け入れた上で、「慌てずやることをやっていれば大丈夫だ」という安心感を与えています。

― 英語指導で、生徒のモチベーションを高めるワンポイントアドバイスなどはありますか?

  • インタビュー風景今年行った方法ですが、難しい英文を僕が説明して、生徒に理解させたうえで、その英文をその場で暗唱させ、生徒を指名して言ってもらい、できた生徒をクラス全体で拍手するなどの方法を行いました。これは読解の授業で有効かと思います。読むだけの一本槍ではなく、難しい構文を解説した後、それを暗唱させ、最初は言えそうな生徒を指名し、クラス全体に「できそうだ」という雰囲気を作り出した後、多少苦手な生徒にもやってもらうようにします。時には途中で助け船を出したりしながら最後まで言える経験をさせます。1授業に1本いれるだけでも「英語が言えた、しかも難しい英語が言えた」という経験は生徒たちにとっても嬉しいようです。できた時にはこちら側もオーバーに驚いてみせ、クラスの雰囲気を良くして生徒のモチベーション向上にも繋げていきます。しっかりと英文を理解していないとこの作業はできないため、単純な丸暗記とは違います。生徒には「これが英語が分かっているという感じだ」ということを授業中に実感してもらえますので、この方法によりクラスの学力向上にも繋がりました。特に、クラス全体で拍手をするという時間が最も盛り上がるところです。

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聞き手:吉田