ホーム(代ゼミ教育総研) > 新着情報・お知らせ
2015夏期「授業法研究ワンデイ特別セミナー」
受講者から出た質問に担当講師が答える「質疑応答集」を公開!

2015年夏期 授業法研究ワンデイ特別セミナーの中で、受講者の皆様からいただいたご質問に対して、担当講師がお答えします。共通の疑問を持った現場の先生方に広く共有いただければ幸甚です。
※いただいた全てのご質問にはお答えできませんが、どうかご了承ください。

本部校出講日 科目 担当講師
7/25(土) 日本史 井上 烈巳
物理 為近 和彦
生物 鈴川 茂
7/26(日) 世界史 佐藤 幸夫
化学 藤原 康雄
小論文 木村 勧
8/1(土) 総合英語(1) 西川 彰一
文系数学 阿由葉 勝
現代文 國井 丈士
政治経済 蔭山 克秀
8/2(日) 総合英語(2) 佐々木 和彦
理系数学 貫 浩和
古文漢文 望月 光
倫理 畠山 創

2015夏期 授業法研究ワンデイ特別セミナー「質疑応答集」


井上 烈巳
日本史
【7/25(土)実施】

限られた時間の中で文化史をどこまで扱うのか、ヒントをいただきたいです。
授業時間の設定は、それぞれの学校や学年によって事情が異なりますから、一概には設定できないところです。しかし、教科書に記載されている文化財も、各時代の代表的なものであって、決して歴史上の全ての文化財が紹介されているわけではありません。少ない事例紹介の中で、なぜその文化財が掲載されているのかを考え、その文化財の意義を再確認した時、教えるべき事項が浮かび上がってくるのではないでしょうか。極論すれば文化財の事例は本質を理解するための材料であり、目的が達成されるのならば個別の文化財を紹介する必要は無いとも言えるのです。定期テストなどでも、このことを意識した問題作成を行い、少しずつ文化史の意義を教師間で共有することが、効果的な文化史の授業に繋がると思います。
教科書の行間を授業中に埋めるために、先生が行われていること等はございますか。
当然ではありますが、まず、教科書を徹底的に読み込むことから始まります。教授資料なども活用して、章立てや段落分け、論理展開の方法を確認し、教科書の本文が、「何を省略したのか」を把握しなければなりません。板書やプリントは、教科書本文よりもさらに簡略化された形になるわけですから、事項の記載だけで生徒がその分野を立体的にイメージできるように、整理された口述や映像資料を用意し、場合によっては生徒の思考時間を用意することで、論理展開の方向性を意識させることも必要でしょう。教科書以外の教材で説明して当該分野のイメージが出来上がってこそ、奥深い教科書の本文が理解できるようになると思います。我々が行うのは、生徒が教科書を自力で行間まで含めて読めるようにするための準備であると考えています。
史料を授業で扱う時、どの程度の説明がいるのでしょうか。史料を扱うとどうしても時間がとられてしまいます。
高校日本史の課程で利用される史料のほとんどは、活字起こし、書き下し、日本語訳、一部引用などの手法で「加工」されたものです。そういう意味では、文化史の文化財などと同じく、これらは多くの歴史資料の中から意図を持って採用・掲載されたごく少数のものであり、史料集の全てを読み切ったとしても「史料を網羅した」とは言えない性格を持っています。現場の実情を考えた時、受験を前提とした演習的な授業では、出題傾向から問題例を意識した頻出史料解説プリントを利用して時間効率を高め、必修授業のクラスでは、史料の掲載意図を意識した説明を授業内で行うことで史料そのものは直接扱う必要を無くすなどといった、クラスの事情に応じた授業をする必要があると思います。ノルマ的に史料に目を通す必要は無く、歴史を理解する材料の一つという状況に応じた扱いであるべきかと存じます。
先生は授業の導入の際にどのようなことをされていますか。効果的な方法があれば、ご紹介いただきたいです。
クラスに応じた入り方で良いと思います。体育の後で息が上がっている状態と朝一番の状態で同様のスタートをきることは、訓練された生徒でなければ難しいと思います。ただし、どんな状態であろうが、生徒が聞きたいと思うような授業でなければ、本当の意味で集中力を持った受講は期待できません。私の場合は、一つ目は前回の復習から始まる方法で、これは歴史の連続性や分野を超えた関係性を認識させるために有効だと考えています。前回の内容を確認した方が、その時間自体もスピード感のある授業が展開できます。二つ目は、その時間のテーマに入る際に、それを象徴する著名な事物や事件、人物を提示する方法です。つまり、「メインディッシュ」を先に紹介するわけですが、これは授業の展開を盛り上げる上でも、生徒に到達点を示して意欲を喚起するという点でも有効です。セミナーに来て下さる先生方が、講義テーマを意識して聴講して下さるのと同じ感覚です。
日本史を教える際、生徒の目線に立つことがあると思いますが、どのようなことに気を付けていますか。
世代的な違いや性差については、おそらく全ての先生方が普段から意識されていると思います。ただし、そもそも、生徒に限らず、他者の目線に立つことの困難さは、実社会を生きていく上での素養として私たち社会科教員が意識して伝えていかなければいけない事項であるわけですから、そういう意味では、必ずしも全ての目線を網羅することに拘らなくても、ご自身がお気づきになった視点を適宜生徒たちに紹介されて、複数の観点を提示できれば良いのではないでしょうか。もちろん、歴史の教訓を活かして、立場の弱い者の視点には常に気を配っていたいものです。生徒も、日々刻々と成長していきます。テストの解答などからその傾向をつかみ取り、生徒の現状より少しだけ大人の視点から捉えられるように引き上げていくことが、我々の務めなのかもしれません。


為近 和彦
物理
【7/25(土)実施】

身近な物理と教科書の物理の接続をうまく授業に生かす方法などございますか。
教科書で学んだ内容がどのような現象と密接な関係があるかを考えることは非常に大切です。まずは、高校の範囲で学ぶ内容で説明できる自然現象から入るのが良いと思われます。次に現在の科学技術の中でどのように用いられている内容なのかを考えることも重要です。各出版会社から出されている教科書のコラム、発展事項、挿絵などを参考に、指導書に書かれている内容を参考にするのが良いでしょう。また、科学雑誌のニュートンやサイエンス、副読本としての物理図解なども参考になります。各セクションごとにノートを用意し、ネタが見つかるたびに書き込んでいくようにしましょう。ついでに科学史についても同様にしてみるとより興味深い授業が展開できると思います。
3年間の効果的な学習カリキュラムを教えていただきたいです。いつまでに教科書を終わらせるべきなのでしょうか。
大学受験を考えるならば、高校3年の1学期までに原子物理まで終わらせるのが理想だと思います。しかし、中高一貫校でなければ、高3の2学期まで使わなければなかなか終わらせることはできないと思います。そのような場合には、原子物理以外の範囲の入試問題演習を高3の夏期休暇から始め、2学期終了時まで、原子物理の授業と並行して行うのが良いと思われます。もちろん、内容を学ぶ授業が最も大切ですが、少ない問題数でも構いませんので、学校の授業の中で演習問題の取り組み方も生徒たちに伝えた方がよいと思います。
文章から、起きている条件が設定されている現象を、なかなか把握できない生徒に対しての効果的なアドバイスがあればお聞きしたいです。
このような生徒は非常に多いですね。最も重要なことは、力学の分野で図を描くことの大切さを教えることだと思います。物理的な内容の文章を読んで、それを図で表すことができるか否かで、現象が捉えられているか否かが決まります。すなわち、図を描こうとしても描けない場合には、その文章の内容が良く理解できていない証拠なのです。まずは、力学の分野で徹底的に図を描く大切さを指導することです。そうすれば、波動分野でも電磁気の分野でもまずは図を描いて現象を把握しようと考えるはずです。特に、干渉、ドップラー効果、定常波、電磁誘導、荷電粒子の運動などでは図が最も大切になります。
考えさせ、基本事項を活用して応用的な内容を解決する力を育てる授業を行うように、と最近言われておりますが、取り組もうとしてもなかなかうまくいきません。何かヒントをいただけますでしょうか。
比較的難度の高い入試問題(京大や東工大など)を活用するとよいでしょう。特に、教科書の章末問題や、一般の問題集には掲載されていないような生徒にとって初見の問題を選んで、その問題を教科書レベルの基礎事項だけで解く方法を考えましょう。難度の高い問題でも、生徒にとって初見の問題でも所詮は基本的な物理法則を使えば解ける問題です。どんな法則や原理をどのように活用して解いているのかを徹底解明するような問題演習の授業を考えてみてください。
扱う問題を選別する際に注意されていることなどございますか。
いかに少ない問題数で多くのことを学ぶことができるかを第一に考えます。すなわち、複雑な数値計算や無駄に面倒な数式計算が含まれる問題はまず排除します。次に考えるのが問題の難易度です。物理が十分理解できている生徒に対しては、生徒が見たことがないであろうと思われる問題を選別します。初見の問題を恐れないための練習になりますし、生徒も「高校生が解けるような問題のはずだ。」と考えて取り組めるようになります。一方、物理が苦手な生徒に対しては、章末問題でみたことがあるような問題で、かつ比較的難度の高い大学の過去問を利用します。解けることの楽しさに加えて、自信にもつながるようです。是非試してみてください。


鈴川 茂
生物
【7/25(土)実施】

図やグラフ、表を見て答えさせる考察問題の解き方として何か有効な方法などございますか。
生物の考察問題では、“図やグラフや表などの結果からそうなるまでの途中過程における現象”の考察を求められることが多いため、答えを知ってしまった生徒の多くは、その問題の解法までも分かった気になってしまうことが多いです。私は普段の授業で、この途中過程における考え方を徹底的に生徒に伝えるため、色ペンを使って「丸数字や※や☆などの記号で明記すること」を行っていきます。具体的に申しあげますと、生徒自身に直接、解答に繋がる肝となるグラフの一部分などに色ペンでチェックさせて、“ここから何が言えるか”も書かせ(そこに(1)や※と書かせます)。次に、また異なる肝となるグラフの一部分などに、“(1)や※から何が言えるか”を書かせます(そこに(2)や☆などを書かせます)。このようにして、考察していく上で“考えていく順番”や“考え方”を生徒に明確に伝え、私の頭の中の考えをなるべく具現化した板書を行っていきます。
生徒のモチベーションを高める工夫として先生はどんなことをされていますか。
「問題を解かせる」ことでモチベーションを高めています。生徒に計算問題を解かせるのが目標である場合、本セミナーで示しましたように、その典型問題の解法を授業中に丁寧に表現していき、「これが解けたら大丈夫!」という基準を生徒に促し、その類題を解かせます。その際、類題を自力で解いた生徒自身に学力アップの実感を持たせることで、モチベーションが上がっていくものであると考えています。また、知識問題が多く取り上げられる単元でしたら、授業中に「ここが大事!」と強調したところが多く出ている問題を解かせます。例えば、授業でゴロ合わせを明示した直後に、そのゴロ合わせを用いて解く問題を多数用意する、などの工夫を行います。生徒に、「先生の授業を受けたから、この問題が解けた!」というように思わせることをかなり意識して、私は授業計画を立てています。
教科書ごとに内容や用語にばらつきがあったり、データに違いがあったりします。どこをどのあたりまで教えるべきかについて、先生はどうお考えですか。
教科書会社特有の内容に関しましては、(1)入試において、知っておくべきか、(2)他の単元との繋がりが深いものであるか、の2点に着目して授業で扱うか扱わないかを決めております。(1)数研出版のみに記載されている「加重」につきましては、2009年浜松医科大のように知識がなくても解ける入試問題が多いと考えられるため、私はこの内容を授業では扱いません。(2)第一学習社のみに記載されている「ノーダルタンパク質」につきましては、その後学習する「中胚葉誘導」や「神経誘導」との繋がりが深いものであるため、私はこの内容を授業で扱います。また、DNA量のグラフにつきましては、最初は授業でメインで扱っている資料集に沿って説明します。その上で、他の資料集に記載されている内容と2011年のセンター試験の核膜の形成が終期の最中で行われていることを示した図を生徒に見せ、“DNA量のグラフでは、このように出題されることもある”ということを明示します。
生徒の予想を裏切るような発問をしたいと考えています。何かヒント等はございますか。
私も、同じ思いで日々の授業計画を立てております。その中で私が意識していることは、私の思い描いたストーリーに生徒を引き込むことで、生徒の予想を裏切るような発問ができるのではないかと考えております。例えば、1865年にメンデルが立てた分離の法則を減数分裂のしくみと交えて説明しながら、「どうして、メンデルは減数分裂での現象を“法則”と言ったのかな?」と発問するなど、「歴史」の流れで切り込むような授業展開で、ストーリーを設定していくと上手くいくことが多いです。また、「遺伝計算」における“数合わせ”の概念を授業で扱う際に、わざと間違った板書をして、しばらくしてから、「この解法は間違っているんだけど、どこが間違っているのかな?」と発問して、教師側から積極的に裏切ってみるなど、緩急をつけながら授業を展開していくことを心掛けております。些細なことですがヒントになれば、幸いです。
生徒自身に予習、復習、自学自習を行わせたいと考えています。その大切さを伝え、実行してもらうには、どのような方法が有効だとお考えですか。
普段の授業において、「たくさんの問題を解いていくことの大切さ」を頻繁に説明していきます。私は、生徒が授業を受け、そこできちんとノートをとれば、「鈴プリ」(本セミナーで紹介させていただきました問題集です)を“すべて”自分自身で解ける状況を作るように意識しております。その際、各単元の最初の問題は、授業内容をそのまま載せたような問題を解かせ、生徒自身にスタートでつまづかないようにさせ、徐々に、授業内容より少し細かい内容を盛り込んだリード文の問題に切り替えていきます。そして、“次の授業までにここからここまでを解いてくるんだ”というラインを明確にしていきます。実験考察問題を扱う際には、必ず次の授業で解説を行います。「鈴プリ」を完全制覇させること、そこを主眼として授業運営を行い、生徒に問題を解かせるというレールを教師側から積極的に敷いていくことで、生徒自身の自学自習を促しております。


佐藤 幸夫
世界史
【7/26(日)実施】

思考力、表現力を高める授業を行いたいと考えていますが、現状では教科書を終わらせるだけで精一杯になっています。先生ならどうされますか。
正直教科書にあるすべての世界史を子供たちに本当に理解してもらうには、現行の高等学校で与えられる時間では全く足りないというのが現実だと思われます。その上、知識力以外のモノを子供たちに付けさせたいと考えるのならば、つまり、目的が「世界史における思考力・表現力を高め、養うこと」とするのであれば、広い知識を知ってもらうことは諦めるという「割り切り」が必要になると思われます。
もし、私自身がその立場にあるならば、「全時代は教えるが、全地域は教えない」とするでしょう。元来、世界史は、「世界」の歴史ではなく、「日本も含めた世界の国々」の歴史であって、テストのためだから全地域を教えねばいけないのです。世界史というツールを使って、子供たちの「思考力・表現力」を高めたいのならば、教材として使いやすい単元・分野を元より選び、子供たちが考えにくい(身近ではない)単元・分野は削除又は薄く教えるという方法をとると思われます。
アクティブラーニングを世界史にどのように取り入れていくか、気を付けるべき点やアクティブラーニングの一例があれば参考にしたいのでご教授ください。
アクティブ・ラーニングは元来「能動的な学習」ということなので、小学校や中学校の社会科における自由研究の発展版、中学校や高校でみられる自由討論会のような方法は今までも存在しておりました。勿論、このような「能動的な学習」は触れるべき課題に対する興味を沸かせるのに役立ちはします。しかし、現行のような、試験の結果で成績や大学の合格が測られる場合は、時間的なリスクが高すぎると思います。ですから、前問の回答が背景にあった上で、より試験に出題される「有名な出来事」や「有名な人物」、「期間の存在する革命のようなモノ」、「世界遺産の建造物」などを題材にアクティブ・ラーニングのネタを作ると良いと思われます。例えば、自分が指導するならば、「模擬国連」「逆転世界史(もし、こうなっていなかったら・・・)」「歴史上の人物になれ(君だったら、ここでどうしていたか・・・)」「天国からの日記(すでに亡くなった歴史上の人物がその後を語るなら・・・)」などは面白い授業展開になるかもしれませんね。
生徒の知識は短期的な記憶に留まるケースが多いです。センター試験で平均以上の点数をとらせるための具体的な手法にはどんなものがありますか。
このケースは2つのポイントがあります。1つは「生徒が短期的な記憶になってしまう」ことを回避する方法、もう1つは「詰め込んだだけの短期的な記憶をテストのために定着させる」ための方法です。
前者は、授業形式と受ける生徒の姿勢を改善することかと思われます。単発的な用語は大人でも長くは覚えられません。しかし、映画や漫画のストーリーならば長く覚えていられることを考えれば、講義=ストーリー性を持たせ、生徒には聞くこと・見ることに集中させることでしょう。ですから、穴埋め的な学習ではなく、ノートを整理させる復習が効果的であることが分かります。
一方、後者の方法ですが、通常の教科書進度とは別に、既存単元の復習テストを1週間に2回程度行うことでしょう。勿論、きちんとテストスケジュールを作ります。全範囲ではなく重要な単元だけ。ひと通り終われば、次は範囲を広げてテストします。基本繰り返ししかありませんが、その難易度や出題形式は子供のレベルに合わせ、7割程度取れるテストを作ることが大切だと思います。
センター試験対策など、演習形式の授業方法・展開がうまくつかめません。50分という時間の中で行うとすると、どのような流れで行うのが効果的かのアドバイスをいただきたいです。
演習を自宅でやってくるか、授業中にやらせるかにもよると思います。私でしたら、前の授業の最後に、次回の演習の範囲のポイントを話しておき、授業の最初15〜20分をテスト(空欄ではなく、子供にとって解説が有意義と思われやすい年代正順・正誤問題・10〜30字の短文記述にします)、残り30〜35分を解説に当てます。解説は、演習する問題のレベルによって違いますが、演習があくまでも知識のチェックであるとするならば、レベルアップできるモノ(テーマ的なモノより深い知識の整理)を一纏まりの板書にしていくのが良いと思います。ただ、30分程度なので、整理された板書は多くて3つ、あとは走り書きをメモしてもらう程度になるでしょう。
生徒に満足感を与えることが大切なので、演習に使用する問題の吟味が最も大切になるでしょう。間違えても、きちんと解かずに入試問題をコピペして使用するなどは言語道断だと思っています。
論文指導をする際には、加点法で行うのがよいのか、減点法で行うのがよいのか、教えていただきたいです。
絶対に加点法です。というより、試験が加点法ですから。必要な用語や表現や説明に得点が与えられるのが世界史の論述試験です。小論文テストのように、個性的な表現やこういう考え方・見方もあるという試験ではありません。出題者が答えて欲しいモノが決まっているのが社会科の論述テストですから、「この出題にはこういう用語や説明が必要なのだと理解してもらう」という意図から考えたら、減点法では必要な内容が浮き出てきません。名前は「論述」ですが、やはり、「知識あっての思考力」を問うていることを子供たちにはわかってもらわねばいけないと思います。本当の世界史を理解するのに、本当にいいやり方かどうかは分かりませんが、テストでは点が取れるようになるでしょう。


藤原 康雄
化学
【7/26(日)実施】

答えをそのまま覚え、与えられた問題集と同じ問題しか解答できない生徒がいます。受験で力を発揮するためには、こうした生徒にどのように指導すればいいのでしょうか。
「答えをそのまま覚えてしまう」の程度にもよりますが、受験指導を考えた場合、その学習方法は「スタート」には悪くないと思います。数字が変わる・物質が違う程度の変化に対応できるだけでも、はじめは問題ないのではないでしょうか。おそらく、この生徒さんは、「計算の立式は同じなのに、質問の仕方が異なるとできなくなってしまう」という状態なのだと思います。この場合、すごく時間がかかります。この問題はなぜ「暗記しているあの問題」と同じ解き方ができるのか、それを一つずつ説明してあげることからはじめるしかありません。「問題を見るとやったことないと感じ、解説を見ると見たことがある解き方と感じたら、質問しに来てね」というだけでも違ってくると思います。
できる生徒、できない生徒が混在するクラスではどこにレベルを合わせるべきだとお考えですか。
自分のオリジナル講座を例にしてみると、できない生徒にあわせています。授業に用いる教材の中に「できない生徒であっても解くことができる問題」を入れておきます。また、そのほかに「かなりできる生徒でも解くことが難しい問題」を入れるのではなく、「かなりできる生徒でも引っかかる部分がある問題」を入れます。「難しすぎるよ、そんなのできないよ」という問題を入れてしまうと不満を生んでしまうかもしれません。そうではなく、予習でできたと思って解説を聞いていたら「こういう間違えがよくあります」という間違えをしてしまった、という状態を作れればベストです。
自分で東大の問題を解いたりもしますが、それを受験指導をするにあたり、どのように活用していけばよいのかをご教授いただきたいと思います。
東京大学の問題に限らず、難関大学の入試問題をご自身で解かれていることは、それだけでも非常に有益かと思われます。確実に先生ご自身のスキルアップに直結するでしょう。さらに、以下のようなことに活用することも効果的であると考えます。(1)各単元でどのような入試問題が作成されているのかを確認する。そこから逆算することで、高1・高2でどのレベルまでやっておき、高3の演習授業でどの程度のレベルを扱えばよいかが見えてくると思います。例えば、今年度いくつかの旧帝大で出題があった気体の溶解度は、すべて全体の物質量に注目した溶解量と非溶解量の和を立式するスタイルです。これには、初めての学習の最後にその立式を見せ、高3での演習で再確認する必要を感じさせます。(2)記述問題にどのようなものが出題されているかを確認する。これは、日々の授業での板書=ノートの構成の資料となります。
先生は、計算問題が苦手な生徒への対応をどのようにしていますか。
計算問題が苦手になる理由は大きく分けて二つあると考えています。(1)化学の入試問題の性質、(2)生徒の計算能力、です。(1)化学の問題は中学受験の算数の問題に似ているのではないでしょうか。多くが「誘導のない」「短文形式」問題です。解答に誘導がないため、「解き方を聞けばわかるが自分では思い浮かばない」という状態になることが多いです。これには、各単元ごとに明確な方針を提示してあげることが必要です。「この単元はまずこのやり方でやってみて、うまくいかなかったらじっくり考える」というはじめの一手を身につけさせるような授業展開が有効であると思います。(2)計算問題を苦手になっている生徒は自分で答えが出せていないので自分で計算をしていないことがほとんどです。(1)がうまくいけば解ける問題が増え、計算力をつける機会も増加します。
無機分野、有機分野、それぞれの指導上の注意点等ありましたら、教えて下さい。
このノート(このプリント)をきちっと覚えればセンターレベルなら大丈夫(レベルは任意)というものを作成し、各単元でセンター試験の過去問を使用した小テストを行ったりすると、メリハリがつくのではないでしょうか。また、どのようなテーマにでも無理やり計算問題を作り、作った反応式でやってみよう、といった演習要素を加えるのも効果的だと思います。また、私が担当する冬期講習講座では社会科の問題集のような一問一答を掲載しています。正誤問題の対策などにも効果が大きいです。


木村 勧
小論文
【7/26(日)実施】

受験の現代文(評論文)の指導と小論文の指導に共通するものはありますか。どちらも「現代社会の事象をどうとらえるか」という視点が必要だという共通点のある科目だと思います。
共通点の第1点は、本文の要約力を現代文の学習の中で養うという点です。小論文の出題の多くは、「本文を読んであなたの考えを述べなさい。」というタイプの形式です。その際まず、本文内容を「短時間で」「的確に」要約し、答案の冒頭に記述する作業が要求されます。その練習として、現代文の学習がうってつけのものになります。よく、「新聞の社説を要約して文章の要約力を身につける」という指導がなされますが、既に要約的に記述されている新聞社説の要約作業によっては、小論文に必要な要約力は身につきません。筆者の生(なま)の主張が記述された現代文の文章を要約することが、なによりのものになります。
共通点の第2点は、小論文の人文系論点の学習として、現代文の学習が役に立つということです。ご質問では「現代社会の事象の捉え方」とありますが、現代文(入試現代文)で出題される文章は、ほとんどが哲学、言語、文化等の人文系のものであり、また内容もかなり高度なものです。その意味で、人文系の小論文対策としては現代文学習が大変有効なものになります。
小論文の参考書でおすすめのものはございますか。すぐに役立つものを求めています。
小論文の書き方の「すぐに役立つ参考書」としては、まず私がセミナーで使用した教材テキストをお薦めします。このテキストには、私が考える小論文のノウ・ハウの全てが詰まっています。
その上で、小論文のスキルを磨くために強くお薦めできるのが、代々木ゼミナールが出版している「新小論文ノート」です。この本は、代ゼミ講師と代ゼミ教材研究センターとが全力を注いで作成したもので、珠玉の小論文演習問題集といえます。小論文入試で出題されるテーマと問題を厳選し、解答と解説を掲載した信頼できるテキストです。毎年改訂されていて、最新年度のものが2016年版として、2015年7月に出版されています。教室での共通教材として是非ご利用ください。
新聞コラムの要約は役立つのでしょうか。また、新聞をどのように使った指導が効果的なのでしょうか。
新聞コラムの要約は、先の質問でもお答えしましたが、要約力の養成としては、ほとんど役に立ちません。ただ、時事的な問題(現代社会の重要問題)を知るという意味では、新聞コラムは直接的に小論文学習に役立ちます。ただ、ここでも問題があります。一般に新聞コラムの内容は、小論文での出題テーマと比べて内容が細目的すぎるということです。その意味で、新聞コラムは、内容面から小論文出題にふさわしいものを選別する必要があります。具体的には、現代社会あるいは日本社会の根幹に影響するような問題を選ぶ必要があります。その際、参考になるのが、現在各種出版されている小学生向けのニュース本やジュニア版として出版されている書籍や冊子です。そこで取り上げられている項目を参考に、適切な時事問題のテーマを選んでいくと良いでしょう。
初学者に小論文を指導する際に注意すべき点などございますか。
これは、大変重要な質問です。初学者への小論文指導には最も指導者側に熟練を要するからです。以下具体的にご説明しますが、その前に、まず初学者への指導時期に関してお伝えしたいことがあります。初学者への小論文指導は、その時期が最も重要な要素になるということです。ズバリ言いますと、「指導開始は早ければ早い方が良い」ということです。中学生はおろか小学生、いや文字を覚える頃から小論文(論理的思考と表現力)を養っていく必要があるともいえるでしょう。では、本題の初学者への小論文指導法ですが、その際には、セミナーでお話しした小論文作成の方法の各項目を、さらに細分化して順次身につけさせることが必要です。決していきなり志望校の大学入試問題を使った演習に取り組ませてはいけません。まず、小論文で必要な「各項目」をパートに分けて「部分練習」を積むことから始めるべきです。このような作業が速やかに進む生徒さんとそうでない生徒さんとがいると思いますが、試験期日がいかに迫って来ている場合でも、この「部分練習作業」は併用させなくてはなりません。
小論文において、個別指導と集団指導の使い分けはどのようにされていますか。
私の場合をお伝えしますと、小論文の指導の基本は、代ゼミの各種「小論文」の授業での集団授業にあります。そこでは、小論文答案作成の基本的メッソードを伝えると共に、小論文テストで答案の実作を行っています。生徒が実際に書いた答案は代ゼミの答案添削部門を通して添削されて毎翌週に生徒に返却されます。そして、次回時の授業で、そのテスト問題を元に具体的な答案作成方法を講義するという運びになっています。ただ、集団授業だけでは小論文の能力の大きな向上は望めません。ここで重要になるのが、生徒への個別指導です。代ゼミ添削部門を通して添削された答案を生徒が書き直して講師(私)の所へ持ってきます。私は、授業間の休み時間を使って生徒に書き直しポイントを指摘して、再度書き直しをさせ、さらに書き直しされた答案を生徒が私の所に持参してくるというサイクルを辿ります。場合によってはこのサイクルが何循もすることもあります。このような書き直し作業が生徒の力を大きく向上させます。担当生徒は大勢いますが、同一問題を使用し、さらに書き直させるポイントを絞ることで、現実的に対応ができているのだと思います。ご参考になりましたら幸いです。


西川 彰一
総合英語(1)
【8/1(土)実施】

単語テストを定期的に行ってもなかなか生徒の語彙力が伸びません。語彙を増やす良い方法があれば何かヒントをいただきたいです。
ただやみくもに「単語を覚えろ」と言ってもなかなか難しいかと思います。私自身は「単なる単語を覚えることが、センター試験等の入試問題においていかに得点に直結するか」ということを体感してもらうために、語彙力のない生徒に対しては事前に語彙リストを渡した上で、つまり自分に語彙力がある前提でどのくらい得点できるかというのを体感してもらうような問題演習を1学期の早い段階で行っています。結局のところ本人が「覚えれば得点できる」と自覚して主体的に取り組むように差し向けるのが最も効果的であるように思われます。
生徒が英語に対してやる気を持って自主的に勉強するようになるために、授業の中でどんなことができるとお考えですか。何かヒントをいただければと思います。
英語に対してやる気を持たせるには、当然のことながら英語を好きになってもうのが最も容易な方法かと思います。そのためには授業を、その授業を行っている先生を好きにならなくてはならないと思います。受講しているすべての生徒にとって魅力的な先生であることは大変難しく、私自身も苦労していることではありますが、私自身心掛けているのは、とりわけ出来ない生徒には(私を拒否しているように思われる生徒こそ)教室の外でも積極的に声掛けをするようにしています。その際まずは出来る範囲での予習を促し、ほんのわずかでもできている部分があれば、それを授業中に見逃さず皆の前で指名発表させ、大いに褒めて自信を持たせるということを大切にしています。
文法書や参考書にある内容をそのまま説明するのではなく、いかに生徒の頭に落としやすい説明にするかに悩んでいます。何かアドバイスをいただければと思います。
文法書・参考書に書いてある説明の例文は無味乾燥なものも多いので、私の場合は、例えば参考書に沿って解説する場合でも、例文は極力自分で用意したもので説明するように心がけています。その際、できるだけタイムリーなネタ(時事ネタや直近のイベントネタなど)で生徒が食いつきやすいものを即興で作るようにしています。出てくる英文の固有名詞がクラスの生徒の名前で、短文であっても文脈が生徒たちにとって想像しやすいものであれば、それだけでも出来ない生徒にとっては耳を傾けるきっかけになりやすく、その分頭に入りやすいように思います。
英語力と共に国語力が乏しい生徒が増えているように感じることが多くなりました。その点で工夫されていることはございますか。
この問題は、私自身教室で痛感することが多く、とても共感を覚える質問です。文法と構造把握力がどんなに正確であっても、最終的に日本語で表現する際に、あるいは全文訳を与えても理解に苦しんでいる生徒を前にする際に、「国語力のなさ」を思わず嘆いてしまいたくなることはたびたびあります。ただし、そのようなときでも自分は「君は国語力が足りない」とは絶対に口にしないようにしています。英語の教師がそれを言ってしまっては、責任転嫁によって「合格させる」という仕事を放棄しているように思うからです。私は些細なことですが、生徒たちが「現代文」の授業でどのようなことを学習しているのかをノートを見せてもらうなどして常に念頭に置き、少なからずそれとリンクさせられるような話を読解の際にするよう心掛けています。あとは「メディアでニュース報道に触れることで日本語のシャワーを浴び続けなさい」というのが私の口癖です。
英作文の指導(和文英訳、自由英作)で大切にされていることはありますか。
早い段階で500程度の基本例文を覚えさせるようにしています。この段階ではなぜそのようなカタチになるのかは分からなくてもとにかく暗唱して英文の型を身につけさせるようにしています。和文英訳においては、3年生の1学期は単語で表現できないものをいかに句や節で「逃げる答案」を作成するかを指導し、減点されない答案作りを目指します。2学期以降は、書ける語彙を増やしながら、句や節で逃げるのではなく単語で表現できるものは単語で表現するといったいわば1学期とは真逆の方向での練習を積ませます。この際最も大切にしているのは、逐語訳ではなく「解釈してネイティブスピーカーに伝えるつもりで」という指示を出します。15秒くらい和文をじっと黙読させた後に、その記憶で英文を書かせるというのも有効かと思います。自由作文に関しては、和文英訳がある程度完成した生徒のみ添削指導を行うようにしています。


阿由葉 勝
文系数学
【8/1(土)実施】

授業では理解し、問題集の問題も解ける生徒が、模試や入試問題になると途端に手が出なくなってしまいます。理解を定着させる方法について何かヒントをいただけますか。
生徒が問題集を解けたとして、それが「問題」と「その類題」を対にして成された場合、解き方を真似することで解けたに過ぎず、きちんと理解して解けたわけではないことも多くあります。そして厄介なことに、きちんと理解して解けたのか、解き方を真似して(覚えて)解けただけなのか、当人も正確には判定できないようです。そこで、問題を解き終わったあと、その問題を第三者に解説するイメージで解答の要所要所に説明をつけさせるのはどうでしょうか。それも頭でイメージするだけではなく言葉で書き出すという形で。そうすることで、きちんと理解して自分で考えて解答を組立てたのか、ただ単に真似して(覚えていたから)できただけなのかがわかるはずです。人に教えられることが完全なる理解であると僕は考えています。これを続けることで、問題文がいつもとは異なる模試や入試問題に少しづつ対応できる力が養われると思います。
解法が複数ある問題を解説する際、先生が解法を選定する基準を教えて下さい。
解法が複数ある場合、他の問題にも利用できる汎用性の高い解法を選ぶことを原則としています。ですが、テーマによっては、汎用性が低くてもその問題には高い適性をもつ解法であればそれを優先することもあります。このような理由から、汎用性の高い解法をきちんと説明したのち、時間の許す限り別解としてその他の解法の概要を見せ、各自比較せよ、とするようにしています。別解を学習することは、1つの問題を多面的に見ることになり、応用問題に取り組む際、題意の把握・言い換え・解法の発想に繋がる力の養成も期待できると考えています。
他の単元に比べ、「場合の数・確率」の単元が苦手だという生徒が多い気がしています。どこに原因があり、どのように指導していくと良いのでしょうか。
中学数学で文章問題(時間・距離・速さ、濃度など)を苦手としていた生徒は、場合の数・確率も苦手なことが多いようです。また、この分野はほんどが文章問題がゆえに、一見全ての問題が異なるように見えて、思うように解けないと感じる生徒が多いのではないでしょうか。そこで、この分野では、【ステップ1.「基本的な数の数え方」「典型的な数え方の工夫」をどのような場面で使えるかなども併せて紹介して定着させる(覚えさせる)】【ステップ2.様々な問題文の言い換えを系統化して見せる(練習させる)】【ステップ3.生徒がよくやってしまう誤りを見せる(どこが誤りか指摘させる】といった内容で授業を展開していくと、きちんとした理解ができた上で習得できるのではないでしょうか。
私立の中高一貫校に勤務しています。高2までに数IIIを終了させるためには、内容の軽量化や授業スピードを上げて進行していくのと、入試基礎から標準までのレベルを上げ、ゆっくりと進行していくのと、どちらが有効でしょうか。
私は中高一貫校のレベル、または対象となるクラスのレベルにより異なると考えています。レベルがかなり高い場合は、入試基礎から標準までのレベルを上げゆっくりと進行し、解法の発想や問題の背景、公式・定理の成り立ちなどを学習することで、数学的思考力の養成が図れるのではないでしょうか。逆に、レベルが高くない場合は、計算や公式・定理の運用、典型的手法の習得に重点をおき一通り全分野を学習し、高3生となってから受験レベルに引き上げて勉強するのが良いかと思います(理想だけを言えば、高3生のとき前半で受験標準レベルを勉強し、後半では分野の枠を越えた融合問題などの応用問題を勉強する形式が良いと考えております)。
クラス内にレベルがかなり違う生徒たちが混在する場合、どこに焦点をあてて授業をするのが有効だとお考えですか。
レベルがかなり違う生徒が混在する場合、私は上位層に合わせて授業を行います。解説は下位層の生徒が理解できるレベルで説明はしますが、細かい部分の計算等は各自でやり、できないときは質問にくるように指示をしています。解説の中身は、解法の発想や解答記述上の注意などをきちんと示します。上位層でも答えは出せるが論理性が欠けた解答をつくる生徒が多いので、解答記述の重要性や解答記述上の注意事項を説明しています。また、別解への導入、他の問題への利用を見せたり、よくある誤りなどを見せどこが誤りであるかを考えさせたりします。これらを下位層の生徒でも理解できる説明で講義をすることで、クラス全体の学習効果を少しでも引き上げることが良いのではないかと考えております。


國井 丈士
現代文
【8/1(土)実施】

現代文の授業で生徒が身につけるべき力とは何でしょうか。このために、どう系統だてて教えていくべきでしょうか。
教科書を使用しての学習指導要領の徹底指導が一番です。今回の改定では、「中学校までに培われた国語の能力」が以前よりも強調されていますから、適宜中学までの学習の復習が大切です。また、「国語表現」の学習が欠如しているように思われます。今回の改定では、「国語表現I」、「国語表現II」が再構成され学びやすいものとなっています。教科書の種類が少ないのは残念ですがとても大切な分野ですし、入試の読解力にも最適なものだと思います。
他教科の偏差値は高いのに、国語だけ驚くほどできない生徒がいます。このような生徒にどういったアドバイスをしたらよいのでしょうか。
「国語だけ驚くほどできない」というのは偏差値が低いということですね。数学のように教科書の演習問題ができたり、社会のように内容がわかったりと、学習内容が試験にダイレクトにリンクしていれば偏差値は高くなると思われます。それに対して国語の場合は、教科書の学習内容が試験にうまくリンクしていないのが原因かと思われます。今回の研修会で強調しましたように、教師が生徒に学習内容について、入試を含めた試験問題にどうリンクしているかを教える必要があるのではないかと考えます。
作問にあたり、問題文を選定する基準はどのように設定されていますか。
学習指導要領の56ページから58ページに照らして選定しています。論理的文章では、基礎段階では構成・展開・要旨などのはっきりしているもの、応用段階では段落の切り方が曖昧で、意味段落の捉えにくい作品を選びます。文学的文章では、人物の言動・心情・情景がバランスよく配された部分を切り取って問題文に使用するようにしています。漢字に関しては、改定常用漢字表を念頭に、できれば訓読みの出題を多めにするように配慮しています。さらに、明治期に外国語から翻訳された語彙を学べるような教材がよいのではないでしょうか。
難解な評論文をどうわかりやすく説明するか、古い時代の小説にどう共感させるかについて悩んでいます。何かヒントをいただけますか。
評論文が難解だといわれる理由にはいくつかあると思います。(イ)高校生の理解できるレベルを越えている内容である。(ロ)日常の語彙と乖離している、特に明治期の翻訳語が多い。(ハ)書き手の文がおかしい。の三点が主なものでしょう。そのうち,(イ)は避けるべきだと思います。東大の問題文であっても(イ)のような問題文は出題されません。(ロ)に関しては生徒に和英辞典を利用して元の英単語を調べてもらうのが効果的です。問題は(ハ)です。できるだけ生徒には読んでほしくない、というのが本音ですが、文章表現に細かい指導を受けた経験がないと思われる、他の学問分野の人たちの文章があまりよろしくないのは致し方ないのかもしれませんね。入試で出題されている以上、取り上げるしかないのかと思っています。
受験生としての意識が弱い1年生、2年生にどのように現代文の醍醐味を伝えることができるのでしょうか。何かヒントをいただけますか。
まず、「現代文の醍醐味」という視点は持たないほうが教師としては気が楽なのではないでしょうか。私の場合「国語」という意識より「日本語」という言語の一形式という意識のほうが強いです。代ゼミの講義では、国語の醍醐味よりも、コトバの面白さ、不思議さなどを語るほうが生徒がついてくるように感じる時が多々あります。サンスクリット語の「アカ」が、日本では「アカ棚」(徒然草)/英語では「アクア」になったとか、英語・中国語・ラテン語・ギリシャ語など言語の広いイメージを喚起し、生徒の言語に対する感覚と興味を引き出すことも我々の仕事の一つではないでしょうか。それが、学年が進むにつれて読解に良い影響を与えていきます。


蔭山 克秀
政治経済
【8/1(土)実施】

政治経済、倫理、現代社会を教えるにあたって先生が一番大切にしている、生徒に伝えたいことは何でしょうか。
公民科目すべてに共通して言えることは、「知識よりもまず内容理解」ということです。生徒のほとんどはこれまで歴史科目中心で社会科を勉強してきているので、「とにかく暗記しないと」という意識を強く持っています。しかしそれでは、政経や倫理は対処できません。だから、まずは大枠と流れをちゃんとわかるように説明し、細かい知識は後回しで覚えてもらうようにした方が、間違いなく頭に残ります。
授業数が少ないのにあれもこれも全部教えたくなってしまいます。ポイントを押さえた授業方法についてのヒントをいただきたいです。
私もセンター系などの時間が足りない科目の授業では、単元によってはかなり大胆に説明を省きます。その際気をつけるべき点は、「全体の大枠・流れ+生徒だけでは理解できないと思われる箇所」は、必ず説明するということです。そして、それ以外はすべてプリントや資料集を効果的に併用して、「このページをよく見ておいてください。ここも試験範囲にします」とするだけでも、生徒は十分勉強してくれます。
抽象的なことをいかに具体的に伝えるか、先生のアイディアなどはございますか。
たとえ話をどんどんはさんでいきましょう。私は、「例えば君らが文房具屋で1本100円のボールペンを買ってるとするでしょう」とか、「ここでカントが言いたいことは、例えば君らが日常でこんな場面に出くわしたとするでしょう」などを、どんどん使います。公民を教えていると、どうしてもかっこよく喋りたくなることが多いですが、結局生徒に伝わらなければ意味はありません。自己満足の、レベルの低い説明になってしまいます。もしミカンやリンゴの値段の話で生徒に伝わるならば、そちらの方がレベルの高い説明なのですから、それをどんどん使うべきです。
金融関連分野を苦手とする生徒が多い気がします。この分野の指導ポイントを教えていただきたいです。
生徒もみんな、日常ではお金を使って暮らしているし、なによりみんなお金が大好きなのですから、日常レベルのたとえ話でどんどん押すのがいちばんわかりやすいです。あと私は、一つ一つの説明の後に「何でかというと」という説明を、意識してつけるようにしています。これは生徒に伝えるためにというのもありますが、自分がちゃんと分かっているかを確認する作業にもなります。そこでうまくまとまらない時は、たぶん私たちがよくわかっていないのです。そのような説明は、生徒には絶対伝わりません。
生徒の「興味関心・意欲」と、受験を意識した授業とをどう両立させるかに悩んでいます。何かヒントをいただけますか。
私は、政経や倫理は「面白くてしかたがない科目だ」と、生徒に毎回意識づけています。「こんな面白いことを趣味みたいに学んで、それでセンターで点を取れるようになるんだから、なんか他科目に申し訳ない気分だよね」と、事あるごとに、心底楽しそうに語ってます。そうすると、生徒の意識づけもそっちに引っ張られ、本当に楽しみながら点数がついてくるようになる場合が多いです。ただ、これをうまくやるためには、まず私たちが公民科目を心底好きにならないといけませんので、お互い精進しましょう。


佐々木 和彦
総合英語(2)
【8/2(日)実施】

一文一文の解釈はできるが、まとまった文章となると苦手を覚える生徒が多く困っています。何か良い指導法はございますか。
「一文一文の解釈はできている(ように見える)が、まとまった文の解釈が苦手」な生徒は、ワンセンテンス内の単語、文法、構文ばかりに気を取られ、前後の文脈を意識せずに訳語を決定してしまう習慣が身についてしまっている生徒なのだと思います。そのような生徒は、一文一文の解釈ができているように見えても、実際には、字面を追っているだけで、解釈はしていないのだと思います。本来、言葉とは、前後の文脈がないと意味のあいまいさや解釈の難しさが生じる方が普通ではないでしょうか?したがって、前後の情報とのつながり(置換・具体例・対比・因果関係など)を意識しないと、正しい解釈をして訳語を決定することはできません。前後のつながりを意識して解釈することができるようになることの延長線上に、まとまった文章の流れを理解することがあるのだと思います。
センター試験において、英語が苦手な生徒はまずどのパートから指導していくのがベストだとお考えですか。
センター試験は、読解が大きな配点を占めるので、読解問題で点数を取らないと話になりません。ただ、英語が苦手な生徒は、いきなり第6問の長文問題に取り組むのは、ちょっとハードルが高いように思えます。まずは、第3問のB(不要文の選択)や第3問のC(発言者の主張の要約)などの、短めの文章を扱った読解問題を用いて、英文の流れを理解する練習、主張を理解する練習を重ねてみるとよいと思います。第2問のAの文法・語彙・語法問題は、生徒にとって学習しやすい部分ですが、学ぶべき範囲が広いので、即効性は期待できません。しかし、やらないと得点は上がりませんので、読解の練習と並行して長期的に指導するしかないと思います。
初見の長文や総合問題になると途端にできなくなる生徒が多いです。理解に繋がる授業をするためのヒントをいただけますか。
思考の過程やその過程で用いた知識を紹介せず、結論だけを言う授業になってはいないでしょうか?「ここに関係詞が省略されていますね」とか、「文脈から明らかに答えは(2)ですね」といった具合に。生徒が初見の問題文を解釈し、解答に至るためには、問題文を解釈するためのルール、解答に至るための思考の仕方を身に付けさせなければなりません。そのためには、「ここに関係詞が省略されていますね」という結論ではなく「どうして関係詞が省略されていると判断したのか」を、あるいは、「文脈上明らかに答えは(2)ですね」という結論ではなく「文章のどの表現とのどのようなつながりを利用して(2)が正解と判断したのか」を説明しないと生徒が次に利用できる知識にはなりません。常日頃、先生方自身が自分の思考や、自分が用いている知識を分析し、それを生徒が真似しやすい形で紹介してあげることが、生徒たちに応用力を身に付けさせる上で重要なのだと思います。
単語帳を用いると単語の意味のみ暗記してしまい、これが読解問題では生かされていないと感じています。英文を読む量を増やしたり、多読等を取り入れながら単語を覚えていった方が有効かと思うのですが、先生のお考えはいかがでしょうか。
僕も、最終的には、英文の中で単語を覚えていく方が単語は定着しやすいと考えています。しかし、語彙が少ない状態で英文読解の学習を開始すると、予習をする際に、わからない単語を調べることに多くの時間を取られ、英文を読解するという本来の目的に至らないまま予習が終わってしまうという生徒も出てきてしまう可能性があります。ですから、単語帳である程度基本語彙を覚えることは受験生にとっては必要だと思います。ただ、「単語帳に載っている単語の意味は文脈から切り離した一面的な意味であり、読解の参考にはなるが、最終的には前後の文脈を確認して訳語を決定しなければならない」ということを十分に指導する必要はあると思います。理想を言えば、使用するテキストの単語を、先生自身がまとめて、生徒に配布して覚えさせるのが一番有効な気もしますが、これは大変な労力ですよね。
問題演習では「全文訳をさせ、一文ずつ説明をし、問題を解説する(解答は配らない)」という方法をとっていますが、どのような方法が、生徒の成績を伸ばすのに有効でしょうか。アドバイスをいただきたいです。
僕自身は、「全文訳」をさせることが有効かどうかは疑問に思っています。恥ずかしながら、僕自身も、時々日本語に変換しづらいと感じる英文がありますし、僕自身、英文を読むときに、すべてをうまい日本語に変換はしていないからです。以前の入試のように、じっくりと時間をかけて、うまい日本語に変換することが読解問題のメインであるのなら、そのような練習をせざるを得ないとは思いますが、ご存知のように、最近の入試問題は、比較的長い文章を短時間で理解する力を問う傾向にあります。全文訳を考えながら英文を読む癖がつくと、英文を一定のペースで読み進む力が付きにくいのではないでしょうか。多少、拙い訳語でもよいので、置換や対比を意識して、流れを追う練習をすることの方が重要ではないかと思います。もちろん、、復習の段階では、全文訳をして英文の理解を確認することは有効ですし、時間に余裕があれば、ぜひやるべきだとは思いますが。


貫 浩和
理系数学
【8/2(日)実施】

授業で扱う問題、扱わない問題の線引きが自信を持ってできていません。何かアドバイスをいただけますか。
ある問題で扱った思考が他の問題に生きるような問題を、私は扱うようにしています。ある程度のベースがないと応用問題への対応も出来なくなると思いますので、その分野における一通りの思考が網羅されるように授業で扱う問題を選ぶようにしています。他ジャンルと融合しているような問題だと、本当に教えたいポイントがボケてしまう可能性があるかと思います。1つの問題からその分野を攻略する考え方がしっかり生徒に伝わるような問題が最適かと思います。
生徒からよく質問されるのですが、計算ミスを減らすコツはありますか。
日頃問題を解く中で早く正確に生徒に演習させることが大事かなと思います。私は計算の仕方まで極力授業では見せようと思っています。その計算の仕方を見て少しでも生徒にミスをしない工夫を学んで欲しいと思っているからです。それから、計算用紙を整理したり、計算だけでなく図やグラフを書くことによってミスを減らしていくことを授業で紹介しています。また、暗記に頼る勉強はミスを生じやすくすると思います。理解をより深めさせれば、自然とミスも減ってくると考えています。
公式等の証明をすべて授業内で取り上げることが難しいです。短時間で効率よく組み込むためのヒントはございますか。
公式の証明は生徒にとっては独学では学びにくいものです。だからこそ証明はきっちり授業の中で説明しなければいけないと私は思います。ただ授業ではいかに簡単に理解させるかがポイントです。理解さえ出来ればほとんどの公式は自ら作ることが出来ると思いますので、生徒に暗記をさせないような指導を心がけています。
数IIIの教科書で最も優先して教えるべき内容はどこだとお考えですか。また逆に、後回しでも良いものはありますか。
数IIIではやはり頻度の高い分野でかつ連動性があるものが優先かなと思います。つまり「極限→微分→積分」は一番時間をかけなければいけないと考えています。新課程になって2年目ということもあり、「複素数平面」「2次曲線」は頻度が低いので、後に回すことも可能かと思います。しかし、これから「複素数平面」の出題は確実に増えていくことになるでしょうから、ベクトルの後にそのまま繋げていっても良いかもしれません。
入試に向けて、教科書の内容と入試をつなげられるような演習問題の選び方のポイントがあればお聞きしたいです。
教科書で扱われているテーマが入試にどのように出題されているのかを紹介することは、良い事だと思います。思考の仕方をしっかりマスターさせ、「最後に受験ではこのレベルまで要求される」と演習問題を提示していけば、自然と受験に意識が向き、授業を真剣に取り組む事が現役合格の最短コースだと生徒も感じてくれるはずです。


望月  光
古文・漢文
【8/2(日)実施】

古文漢文の授業の中で、優先して扱うべき作品などはありますか。
古文の場合、やはり『源氏物語』であろうと思います。生徒たちには、ここ三年のセンター試験が、

13年 『松陰中納言物語』
14年 『源氏物語』
15年 『夢の通ひ路物語』

を出題していることをよく覚えておいてくださいと注意を呼びかけています。
『松陰中納言物語』も『夢の通ひ路物語』も『源氏物語』を下敷きにした擬古物語で、『松陰中納言物語』でセンターが出したのは須磨の巻を敷き写したところ、『夢の通ひ路物語』は藤壺事件を模したところでした。どちらも学校の授業をしっかりきいていれば簡単にわかるお話なのに、生徒たちはあまりすらすらと読めなかったと言います。センター試験は、学校の授業から出題しようとしているんだよ、と、先生方にぜひ強調していただきたいところです。
漢文はやはり『論語』だと思います。早稲田などがよく『論語』のことばを出題していますので、これも念入りなご指導をいただきたいと思っています。
古文漢文の本文をノートに写すことは有効だとお考えでしょうか。先生のお考えをお聞きしたいです。
基本的に「写す」というのは大変重要な作業だと思っています。ただ、生徒たちが主体的に写すのでなければ、あまり効果はないかもしれません。これは音読も同じですね。
私はよく、「写す」という作業の動機付けに、白川静や南方熊楠などの話をします。白川静や南方熊楠のエピソードは、生徒たちにもおもしろいようです。初期の白川静は、甲骨文や金文を紙に写して、京都学派の人々を驚かせるような論文を書いたといいますし、南方熊楠は古典的な英文を筆写することで英作文の能力に磨きをかけ、『ネイチャー』に載せるための英語の論文を自力で書き上げたとか。
白川や南方は、やや奇矯なところがありますが、その奇矯さが若者には刺激的に感じられるのか、そんなにおもしろい人がやっていたのなら自分もやってみようかと思ってくれるようです。少なくとも、「書いてどうなるんや」といった懐疑的な顔はしません。先生も一度お話になってみてください。
古文や漢文の授業がマンネリ化してしまっています。「本文を写す→訳をする・書き下しをする→文法事項の確認」で行っています。何かヒントはございますか。
同感です。古文や漢文の指導はマンネリ化することが多うございますね。これをどうしたらいいか。本当に難しい課題です。
私の場合、近ごろはマンネリ化するのを避けるのではなく、マンネリでいいと思うようになりました。やることは毎年同じでも、そこに新鮮な感動があればいい、と。
具体的に申しますと、生徒というのは毎年変わりますし、クラスによっても違いますから、そのメンバーに合わせて、教える内容や、段取り、切り口などを少しでも変えてみる。うまくいけば楽しいし、プラスの感動があります。失敗すると不愉快で、これはマイナスの感動です。「何年やっているんだ」と自分が情けなくなります。しかし、この情けない結果を、何とかしようと思っているうちは大丈夫なんだと自分にいいきかせて、日々教壇に立っています。
先生!「マンネリだな、これではいけないな」とお思いのうちは大丈夫ですよ。そういうことを考えなくなったら、教師は本当におしまいなんじゃないでしょうか。そう思って、お互い明日もマンネリでがんばりましょう!
漢文指導に十分な時間が使えません。まず生徒に教えるべきことは何だとお考えですか。また、自学自習はどのようにさせたらよいのでしょうか。
時間が不足するなかで漢文のご指導をなさるのは、大変なご苦労でございましょう。お察し申し上げます。
私ならば、まず句法だけは徹底して教えこむかと存じます。句法の知識があれば、あとは教材を与えて自習させても、生徒は何とかやりこなすのではないでしょうか。つぎに漢字や漢語の知識の充実です。これは、古文の授業でいつもやっていることなのですが、語句の説明をするときに「漢文でも役立つから」といって、漢文の学習にいかせるような内容をさりげなく盛り込むようにしています。現代文で語句の説明をするときにも同じような展開が可能なのではないでしょうか。
以上はあくまで、受験指導ばかりしている者の勝手な考えでございます。ご参考になるところが少しでもありましたら幸いです。
生徒におすすめの(読んでもらいたい)古文の書籍などございますか。
国語は「解く」のではなく「読む」。「読む」ことの楽しみを伝える教科だと思っています。生徒に読んでほしい書物はいろいろありますが、古文の場合、やはり『源氏物語』が第一ですね。
『源氏物語』を読め、と、いきなり言っても生徒も困るでしょうから、私の場合は、まず自分の読後感を生徒たちに伝えることにしています。「日本の古典の中で、現代小説を読むように、どきどきわくわくしながら読めたのは『源氏物語』だけだった」と。それから、「今すぐに読む必要はない」ということも強調します。「受験のためにはマンガで十分。五十年か六十年後、みなさんが定年退職をして、時間がありあまるほどできたときに、時間をかけて、ぜひ原文で読んでください」と申します。それから、これだけは忘れないでと念をおして、「『源氏物語』は、どの巻でもそうなんですが、一気に読んでしまわないと楽しめないんです。文化教室なんかに通いながら、ちょろちょろと読んでも仕方がない。密室で、自分一人で、ひと巻を一気に読んでしまうこと」と。
古典とは少しはずれるかも知れませんが、古文の世界への入り口として、近ごろは明治の文語小説をすすめることも多くなりました。
まず、樋口一葉。これは「たけくらべ」ではなく、他の短編、たとえば『大つごもり』などをすすめています。そして、『源氏物語』と『古今和歌集』と浄瑠璃の教養をつけてから、老後にもう一度読む。そうすると、24歳で亡くなった女の人が、なぜ5000円札になっているのかということがよくわかるよ、といっています。
できれば一葉より前に読んでおいてほしいのが、幸田露伴の小説です。これも、文学史で有名な『五重塔』ではなく、『いさなとり』をすすめています。露伴を読んだあとに一葉を読むと、一葉が露伴に影響を受けていることがよくわかるからなのですが、文語で書かれた明治の小説で、今の若い人がどきどきしながら読めるのは、ひょっとしたら『いさなとり』しかないかもしれない、と思うからでもあります。  


畠山  創
倫理
【8/2(日)実施】

対話型授業に関する文献や資料等で参考になるものがあればご紹介いただきたいです。
昨年度のセミナーでは、文献研究の方法についてを行いました。一部、重複するものもありますがご紹介します。尚、字数の都合上、訳者がある場合は省略し、著者と著書名のみを紹介いたします。ご了承ください。マーティン・コーエン『哲学101問』(ちくま学芸文庫)、マーティン・コーエン『倫理問題101問』(ちくま学芸文庫)、ジュリアン・バジーニ『100の思考実験』(紀伊國屋書店)、マイケル・サンデル『ハーバード白熱教室(DVD)』(POLYDOR)、永井均『子どものための哲学対話』(講談社文庫)、永井均『<子ども>のための哲学 講談社現代新書』(講談社現代新書)、河野哲也『「こども哲学」で対話力と思考力を育てる』(河出書房新社)、秋田喜代美『対話が生まれる教室―居場所感と夢中を保障する授業 』(教育開発研究所)、畠山創『考える力が身につく哲学入門』(中経出版)、『ちいさな哲学者たち(映画)』( アミューズソフトエンタテインメント)、など。
週2コマの授業の中で、倫理の全分野は扱えないため、特定の分野をざっくり削ることになります。重点の置きどころや、削ってしまってもよいところの見極めに困っています。何かヒントをいただけますか。
ご指摘の重点の置き方についてですが、特定分野をすべてそぎ落とすのではなく、「青年期の特質と課題」、「思想の源流」、「日本の思想」、「西洋近代の思想」の4つの分野について、センター試験の出題頻度や、山川の用語集の赤字(7冊中6冊以上の教科書で掲載のものは赤字)に指定されている思想家を重点にまとめると良いと思います。特にセンター試験を意識していらっしゃるのであればなおさらです。また、「現代の思想」については、「実存主義」、「社会主義」、「プラグマティズム」を必須としながら、先生ご自身の教育目標に鑑みて、他の思想や思想家については、適宜取捨選択することが望ましいと思います。さらに、「現代社会の課題」については、政治・経済と重複する内容があるため、この部分についても、適宜取捨選択することが望ましいと思います。
ソクラテスメソッドにおけるノートの作らせ方や評価方法をどうするかについて、教えていただきたいです。
セミナーでもお話ししたとおり、積極的に他人の発言についてメモを取らせることが肝要です。従って毎回ではなくとも、レビューシートの作成を求め、そこに発言内容の引用を行いながら、自身の論を組み立てさせるといった方法が望ましいと思います。すでに高校生ですので、予めフォーマットを与えて、そこに整理させたり、メモを取らせることは、反ってノートの作成作業の強要となるため、アクティブ・ラーニングの観点からも望ましくありません。レビューシートで組み立てられた論を評価したり、授業にフィードバックすることで、生徒達の態度や思考もアクティブなものとなるでしょう。
倫理に対する生徒の興味関心を高めるにはどんなことが大切だとお考えですか。
常に身近な問題を題材に「導入」を組み立てることが大切です。私の経験上ですが、ほとんどがこの導入で講義の善し悪しが決まってしまいます。その際、「どんな問題が内在しているのか」、「どんなテーマが衝突しているのか」が分かりやすいテーマを選び、まずは二項対立から議論を始めることをお薦めします。また、教師自身がその問題について関心が無い場合、大抵生徒にも関心を持ってもらうことが難しいという現実があります。場合によっては、「クローズアップ現代」や「NHKスペシャル」などの社会問題からもテーマが引き出せるように思います。
難しい概念については、説明した後、その先の落としどころの設定に困難を感じています。先生は、この点をどのようにお考えですか。
概念については、「具体例」→「文献の一部紹介」」→「要点整理」→「ふたたび具体例」という具合に具体例からの想起をお薦めします。またその概念を「イメージ(図解)化」することも一つの手段でしょう。こうした前提を踏まえた場合と、そうでない場合の「ソクラテス・メソッド」も異なるはずです。最近ですと、田中正人著、斎藤哲也編集・監修『哲学用語図鑑』(プレジデント社)という本が出版されています。グラフィックデザイナー手がけたという点が斬新で、併せてその点に注意して参考にしながら、先生方ご自身で図解を描いてみるのも良いかもしれません。とかく文字情報を文字情報だけで教えてしまうと、ややもすると言語学の世界に入りがちです。「哲学」とは「行為」ですので、柔軟に思考することを、最初に学生に働きかけてください。