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生徒が自ら幸せになっていけるように、何を伝えるか - 宮路 秀作(地理)

地理講師  宮路 秀作

― 若手教員のうちにしておいた方が良いことはどんなことだと思われますか?

  • 自分の専門の科目だけでなく、たとえば地理が専門の先生であれば日本史も世界史も、地歴公民科目をすべて勉強しておいた方がいいと思います。地理を教えていても、歴史のこの話を知っていればもうちょっと話が膨らむのにな、と思うことがあります。教えていけばいくほど足りないことが分かります。この足りないことが分かって、私はそこから勉強を始めていったのですが、それでは遅かったと思います。私が若い時に勉強しなかったから苦労したんです。

― 先生方はどんな勉強をしたらよいのでしょうか?

  • インタビュー風景専門でない科目についても、高等学校の教科書はしっかりと読める必要があると思いますので、まずはそこからだと思います。生徒はよくおすすめの参考書を聞いてきますが、教える側は参考書を読んで勉強するのではなく、まずは教科書、最終的には専門書を読めるようになることが必要です。高校の教科書をしっかり読んで、ここに書いてある内容を理解できるようにします。理解に不安な部分がある場合は、中学校の教科書に戻って確認します。勉強とは知らないことを知っている状態にしていくことですから、教科書を読む中でも「これは知っている」「これは知らない」などあると思います。知らないところが出てきたときに、これを「何だろう」と調べたり、知っていることでも「なぜだろう」と掘り下げていくことが大切だと思います。地理を教えるから地理だけ勉強していればいい、などと自分で限界を決めず、取り組んでみてください。話の面白い人は話題が豊富ですので、いい授業につながっていくと思います。

― 教壇経験を10年くらい積み、「中堅」と呼ばれる年齢になってきたときに必要なことはどんなことだとお考えですか。

  • 教える側は経験を積んでどんどん成長します。でも目の前の生徒の学力は毎年基本的には変わらないと思います。だから、教える側と教わる側の学力は年を追うごとに離れていきます。ここで、「ついてこれないのは生徒が勉強していないからだ」と我が道を突っ走ってしまうと、面白くない授業になってしまうかと思います。経験を積めば積むほど、「生徒に寄り添っているか」という意識が大切になるのだと思います。新人の時は未熟なので全力で授業を行うしかありません。若い時はこれでいいと思うのですが、経験を重ねたときには、難しいことを教えたいという気持ちをいかに抑えて生徒に寄り添うかが必要だと思います。

    日常生活につながるような話をしたりするのもこの一つです。また、流行は常に把握する必要があると思います。決して生徒に迎合するということではなく、生徒を授業に参加させるためにこれらは大切だと思います。例えば私は、流行について一方的に話すのではなく、あえて知らないふりをして「これ何?」と聞いたりします。生徒に発言してもらい、「これって実は今日学ぶこの話なんだよ」と進めていきます。こうすると生徒も興味を持って聞いてくれると思います。やはり教える側が、昔受けた授業の中で面白かったものなどをまねることは有効だと思います。

― ベテランになったら何が求められるとお考えですか。

  • ベテランになると、他の先生からアドバイスを求められる場面も増えてくるかと思います。やはり、経験してきたことを伝えていく必要があるのかと思います。年を重ねるとプレイヤーからマネージャーになっていくという、この意識は大切だと思います。組織にとっては、ベテランの先生方は世代交代を意識しつつ、若い人を育成していくことが必要だと思います。やはり長年教壇に立っている人は話術が上手です。話し方や立ち居振る舞いなど、若い人が学ぶべきところはたくさんあると思います。校内での授業参観の機会は、こういった貴重な場だと思います。若手の先生はいつも「これが自分の最高の授業だ」と思って授業をしています。でも翌年になって「去年の自分の授業は下手だったな」と振り返ったりするのではないでしょうか。これを繰り返して、レベルが上がっていくと思いますので、その時の自分が最高のパフォーマンスではないということを気づかせるためには、経験のあるベテランの先生方が自分の授業を見せていくことはとても有効だと思います。

― 最後に、現場で頑張っている先生方にメッセージをお願いします。

  • インタビュー風景地理でも歴史でも公民でもそうですが、この科目は現代世界そのものです。これらを教えることで、生徒が将来一人になっても自分で稼いで生きていけるようにするための何かを与えることが大切だと思います。「これを学ぶとこういう未来が読めて、今の時代だとこういう分野でお金を稼げるかもしれない」ということを提示することです。お金の稼ぎ方も多様化する社会の中に、生徒は放り投げられます。「今日学んだことによって未来はこう読めるよ」などの具体例を授業中にいくつも提示してあげることが、教師として大切なのだと思います。未来は変わっていきますので、生徒はその時持っている知識で変わっていく未来を読み、自分自身で幸せになっていかなくてはいけません。

    その意味では、生徒には教養の厚い人になってほしいと思いますね。最近は、あまりにも無駄なことを省きすぎている感があります。インターネットで書籍を買うことで、目的まで最短距離で行けるというのは分かりますが、書店に行くと最近の動向なども把握できます。こうした、一見無駄に見えることから教養が増えていくのだと思います。書店に行くと、拙書『経済は地理から学べ!』(ダイヤモンド社)も並んでいますしね(笑)。

聞き手:吉田 敦