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過去を捨てる―自らのレベルアップが生徒の合格へと繋がる! - 藤原 康雄(化学)

化学講師  藤原 康雄

― 指導に際して、若手教員のうちに行っておいた方がよいことは何だとお考えですか。

  • インタビュー風景高等学校では一般に、同じ問題を同じ時期に毎年別の生徒に教えることになりますよね。そのとき、解いた問題をどんどんストックしていく感じで、いわば予習ノートを作ってしまうことが多いかと思いますが、それは若いうちは逆効果になる可能性があると思います。目の前にいる生徒は毎度毎度違うので、例えば同じ問題を解説するにしても、その子の理科の勉強量は逐一違ってきます。だから、その子たちの学力を感じながら毎年、新しい予習をすることが大切だと思っています。公式を当てはめるだけの問題にしても、立てる式が変わってくるかもしれないじゃないですか。過去のノートを見てしまった瞬間、教える側の伸びる機会は失われてしまいます。過去のものを見て授業をするとか、予習をそれで済ませてしまうのは、自分のスキルの向上を完全に妨げているので、やはり毎回予習し直すことが大事だと思います。僕はこれまでの予習ノートを全部捨てています。メモだけ残しておいて、生徒にされた質問をエクセルに文章で打って保存しますが、それ以外は全部捨てています。若いころ必ず予習するという習慣をつけていたから、今でもそれを苦痛なくできるのだと思います。そうすることでこの年齢になってもスキルが上がるチャンスを、予習という業務からもらっている気がします。

― ベテランになっていく(指導経験を積まれる)中で、お考えになったことはありますか。

  • 授業時間は限られているじゃないですか。自分で教材を作成して授業を進めていくときに、好きな教え方ができるような教材を、どうしても選んでしまいがちですよね。例えばひとつの問題集の中で必要な問題と不必要な問題とを分ける際、その必要/不必要の分類自体がいい方向に働くこともあるんですけど、人間ですから、どうしても好きなものを選んでしまう気がするのです。そうするとかなり偏ってしまいます。ちょうど10年ぐらいやったころだと思うのですが、ある程度自分の中で教材を選択するスキルがついてしまったんですよね。こうなると、好きな教え方ができるような教材ばかりを扱ってしまっていました。これじゃいけないと思って、5、6年前から、生の入試問題や一般的な問題集だと出てこない内容の問題を解く数を、急に増やしました。そうしないと、やりやすいものだけで教材を作ってしまい、僕の中で成長がなくなってしまうと思うからです。予備校講師をやって、進学の実績を気にするようになり、教室に入ったら何十人と生徒がいるようになり、生徒からの質問や意見も増えました。少しでも疑問になる点を減らしていなかなきゃならないと思うようになって、初見問題や突飛な問題への対応力をつけることを、授業でかなり意識するようになりました。

― 若い頃と今とで先生自身のお考えに変化はありましたか。

  • 1週間の中でその子が僕の授業を受けるのは基本的には90分を2回です。つまり180分×25回の年間の授業です。これだけで受験が済むわけないですよね。若い頃はある程度自分にスキルがついてくると、授業の中で成績を上げてしまおう、と思って教材を作ったり、授業構成を組んだりしてしまっていました。授業の中でやれることなんて、わずかな時間を借りてやっていることなのでたいしたことありません。その間だけで成績を伸ばすという考え自体がだいぶ独りよがりです。でもそれに気付かなくなってしまっていたのでしょうね。ところが、ある授業で、基礎部分を授業で扱わなかったとき、「ここがわからない」と聞きに来た生徒がいたんですね。その質問に答えた後で、「この程度のことなんて自分でやっとかなきゃダメですね」と彼女に言われたんです。そのとき、いわば自習の質を上げていくことが大事なんじゃないか、と思ったんです。授業の中で成績を上げるということはその問題を解けるということでしかなくて、授業で全部を教えて完結させるなんてムリなんです。それからは自習のクオリティが上がるように授業を行うことを心掛けるようになりました。それが、若かりし頃と、今との、決定的な違いだと思います。もちろん、授業と自習を両方やるから伸びるのですが、自習のクオリティを上げるために、どう授業するかを考えています。それが成績の最終的な向上になるのではないか、と思っています。

― 若手/ベテラン双方の先生方に対するメッセージをお願いします。

  • インタビュー風景若手の先生は、とにかく生徒の質問が自分の授業の欠点を教えてくれるツールだという意識が必要だと思います。生徒が質問しに来たということは、自分の授業で理解しきれない部分があったということです。僕らが思っている、「ここは大丈夫だろう」、「ここから説明しよう」のラインの設定が高すぎたとき、「分からない」という質問が出てくるので、どこを説明したら分かるのかを少しずつ下げていって説明すれば、スキルは上がっていくと思います。自分の授業スタイルが確立されていないうちに、どこまで掘り下げて話すと質問が出なくなるのかを知ることは有効だと思います。「分からない」と言う生徒の人数が多数派になってしまった時点でその授業は崩壊してしまうので、のちのちどう教えるのかを考えて質問を受ければいいと思います。

    ベテランの先生は、生徒の学力低下に嘆いている方が多いかと思うのですが、どこが欠けているのか、今までと比べて何ができなくなっているのかというのを探る作業を、常にし続ける必要があると思います。ベテランであればあるほど、生徒は「あの先生の授業は難しい」、となった場合、質問に来なくなります。難しい授業をする先生に質問しに行かないじゃないですか。嘆くよりもこちらから歩み寄って、以前までよりも基礎的なレベルを教える機会を作るという作業が必要なのだと思います。あとは、電卓ではなく手で計算するということを、是非やってほしいと思います。化学しか教えていないと、数学のスキルが落ちてしまうことがあります。電卓は検算の際に使用し、まずは手で計算してみるということが大切になってくるのではないかと思います。自分の数学のスキルが下がっていることに、気づく良い機会になるのではないでしょうか。是非、やってみてください。

聞き手:吉岡 誠悦