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古代史からの出題は傾向がよみやすい! - 越田 大二郎(世界史)/塚原 浩太(日本史)

代々木ゼミナール 教材研究センター 地歴公民研究室 越田 大二郎(世界史)/塚原 浩太(日本史)

― 入試問題研究はどのように行っていますか。

  • インタビュー風景塚原(日本史):まず自分で問題を解き、主要大学について例年の傾向、内容、形式の比較などを行います。日本史の場合には、各大学について何時代が出題されやすいかなども把握します。また、よく言われることですが、「難関大では近現代が出題されやすい」という傾向が正しいのか、現在も続いているのかについてもチェックしています。近現代は、残っている資料が豊富にあるため、出題する側もより細かい情報が得やすいという特徴があります。このため、前近代(江戸時代まで)に比べて近現代(明治時代以降)は細かい点まで出題しやすく、難関大などは現在でも出題されやすいと言えます。センター試験では6題ある大問のうち、1題を除き時代的に均等に作られていますが、近現代は前述のように残っている資料の量も多いため、出題量はセンター試験においても他に比べてやや多めであると言えます。
  • 越田(世界史):世界史でも同じく、入試問題研究は、出題分野、難易度、形式などについて例年と比べて変化があったか等について大学別に整理していく方法で進めます。世界史では年度の流行などがあり、時事問題が出題されることも多いです。例えば2015年の入試問題では「世界史の中の日本」に関する問題が多く出題されていました。日本史と世界史との融合を意識したような問題です。また、2014年では第一次世界大戦100年後の年であったため様々な大学で「第一次世界大戦」が出題されていました。このため、年度の流行などには注意を払っています。

    世界史は日本史と違い、難関大になるほど近現代が多く出題されているということはありません。ただ、その大学が「保守的か革新的か」というところでの傾向の違いは出てきています。世界史の教科書を50年位前までさかのぼると、中国史とヨーロッパ史が内容の多くを占めていますが、今の教科書では地域も均等になってきており、東南アジア史、西アジア史も随分と分厚くなってきています。保守的な大学では、昔の名残から中国史とヨーロッパ史しか出題しないところもありますし、革新的な大学では現在の教科書のように時代別に均等に出題しているところもあります。こうした傾向は大学によって異なります。一方でセンター試験は、どこの時代からも出題されています。ただ、一般的な私立大入試よりはアジア史が多めである印象はあります。

― 大量にある問題のストックのうち、何年分の問題を使用して傾向を立てていくのですか?

  • 越田(世界史):大学によっても異なりますが、センター試験であれば直近5年分くらいの問題から傾向を立てていきます。あまりさかのぼりすぎてしまうと課程が変わってしまうため5年くらいで行います。
  • 塚原(日本史):日本史の場合にも、センター試験で過去10年さかのぼると問題の形式が変わってしまいます。問い方や選択肢の数が異なることもあります。センター試験は学習指導要領に即して作られていますので、学習指導要領で求められているものが変われば、センター試験の問題も変わっていきます。極端に言うと、2000年以前の問題は、知識問題として受験生に与えることには一定の意味がありますが、「来年度のセンター対策」という意味ではほとんど使用できないと思います。
  • インタビュー風景越田(世界史):一方で、東大や一橋大などでは20年前、25年前の問題をリメイクして出題することもあります。このため、過去30年くらいまでさかのぼっての研究を行います。例えば東大世界史での、2013年の問題は2002年の問題のリメイクです。
  • 塚原(日本史):日本史に関しては、東大では大問が4題あり、時代別に区切られています(古代、中世、近世、近代)。このため、世界史よりは研究の焦点がつけやすいと言えます。また、問題で問われるポイントは過去の問題と共通していることも多いです。前述のように、時代が古くなるほど、文献等から得られる情報は少なくなってきますので、論述問題で問える分野も限られてきます。これにより、出題されやすい分野は固まる傾向にあります。
  • 越田(世界史):この傾向は世界史でも似ています。作問者の観点からは、古代史の方が論述問題は圧倒的に出題しにくいです。文献などが少ないため、出題できる範囲も狭まり、問える内容も過去のものと共通してしまうことが多いからです。

― 論述問題にはどのような対策が必要でしょうか。

  • 越田(世界史):論述問題には単純な暗記では太刀打ちできません。「概念的な理解」が必要になってきます。例えば、「フランス革命」について語義的に説明できても、論述問題には対応できません。「フランス革命」が世界史上におけるどのような事件であり、それによって後世どんな影響があったかなどを踏まえていないと、得点できません。こうした意味では、単純な暗記とは違うものが問われていると言えます。
  • 塚原(日本史):その事件が「なぜ起こったのか」という背景や、それがその後の社会に「どんな影響を与えたのか」は論述の典型的な問い方です。単純に暗記するのではなく、まず前後の歴史の流れ・つながりをきちんと理解した上で、必要な用語を覚えるという学習をしていかないと、国公立や難関大学には太刀打ちできないと言えます。
  • 越田(世界史):大方論述問題は「原因、結果、理由、背景、流れ」などが問われています。時系列に沿って、その出来事を整理して並べられるか、などは特に重要になってきます。特殊な大学でない場合には、このような学習を進めることで対応できると言えます。
  • 塚原(日本史):特殊な大学で言うと、今年の千葉大学の問題は「各時代の平均身長」をテーマとしていました。ある問題では、平均身長と食生活の変化に関する表を見ながら、平均身長の推移を歴史を織り交ぜながら説明させています。各時代の背景を理解した上で、それをどう論述させるかという点で興味深い問題でしたが、今後こうした問題が増えてくるかもしれません。

― 入試問題研究の際に役立つものはありますか?

  • 越田(世界史):「赤本(教学社)」と「全国入試問題正解(旺文社)」です。
  • 塚原(日本史):「赤本」と「全国入試問題正解」は入試研究のバイブルと言えるかもしれません。その他、代ゼミの教壇に立つ講師との話し合いによる情報交換や、講師が独自に編集しているテキストは非常に参考になります。
インタビュー風景

― 入試問題を研究した結果は模擬試験等にそのまま反映させているのですか。

  • 越田(世界史):入試問題は受験者を「落とす」ために作っている問題ですが、模擬試験は受験生を「鍛える」ために作るものです。模擬試験の内容は単純に本試験を真似て作成しているわけではありません。学習効果を考えて、たとえある大学で出題されている語句でも、今後出題されそうにないものは、模擬試験での出題を避けたりします。また、よく見ると年号が一桁違うなどの、意地悪なひっかけ問題についても、本試験では出題されることがあっても、受験生の学習効果が期待できない場合には、出題しません。
  • 塚原(日本史):当然、問題の形式や出題内容は分析した結果に基づき、過去の問題傾向に沿って作成していますが、選択肢を作成する際には、やはり世界史同様「今後の受験生に活かせるか」を考えて出題します。受験生の心理としては、間違った問題は解説を読んでしっかりと覚えようとしますので、そこでしか出会わないような語句を出題することは、受験生の学習効果には繋がらないと考えます。

    また学習の効果という点において、受験生本人が過去問で間違えた問題については、「この語は覚える必要があるのか」など、疑問点をどんどん質問したほうが良いと思います。自分一人で学習していると、「間違えたから覚えなきゃ」と考えてしまったり、「この点数がとれたからいいや」と復習しなかったりというケースもよく見かけます。

聞き手:吉田 敦