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「生徒ならどう解くか?」を考え、問題傾向の変化を分析 - 小林 裕規(物理)/眞田 香織(生物)

代々木ゼミナール 教材研究センター 理科研究室 小林 裕規(物理)/眞田 香織(生物)

― 入試問題研究はどのように行っていますか。

  • 小林(物理):3段階で行います。当たり前ですが、1.まずは解く。その後、2.スタッフで集まって、“スタンダードな解答”の検討を行います。最後に3.“生徒だったらどう解くか”という生徒目線での検討を行います。特にセンター試験の研究は徹底的にやります。答えを出すのはもちろん、設問別分析、難易度の経年比較を行い、概評や新聞用原稿も書きます。
  • 眞田(生物):センター試験以外にも、旧帝大国公立や主要医学部、早慶などの入試問題は、問題数、計算量、論述問題の量の増減、考察問題と知識問題のバランスがどう変化したか、などを大問別・分野別に分析します。
  • 小林(物理):我々予備校の教材研究スタッフは解答速報を作成する関係で、1~3月の時期に一気に入試問題研究を行います。学校の先生方は、お忙しい中まとまった時間を取るのはなかなか難しいかもしれませんが、できれば、期間を定めて一気にやった方が効率的かと思います。
  • 眞田(生物):どこから手を付けて良いのか分からないという方もいらっしゃるかと思います。短時間でも同じ教科の方々で集まって入試問題について話し合う場があれば、そこを足掛かりに、あとは個人単位でも入試問題研究を進めていくことができると思います。協議会を行うのであれば、例えば、入試問題を分野・難易度・内容などといった切り口で振り分けた一覧資料を作成するだけでも話し合いが具体的になるかと思います。

― どのくらいの量の入試問題を解くのですか?

  • インタビュー風景小林(物理):最終的にはほぼ全ての主要大学の問題を解きますが、解答速報の時期はセンター試験、旧帝大国公立や主要医学部、早慶やMARCHなどと絞って解いていきます。学校の先生方もお忙しいと思いますので、まずはセンター試験。その後、志望される生徒様の多い大学・学部を中心に解かれるのが良いかと思います。

― 大量の問題を解いて研究する際にはどのような体制で行っているのでしょうか?

  • 小林(物理):ポイントは“分業”と“チェック体制”です。一人当たりの負荷が多くなればそれだけミスにも繋がりますので、大問別に分担して行うようにしています。また、自分の担当分が終わったら、チェックの為、別の大問を解いてそれぞれ突き合わせを行います。なかなか入試問題研究に十分な時間を取ることが難しい時には、効率化という面で、チームで行うようにしています。

― 過去の大量のデータの蓄積はどのように扱っていますか?

  • 小林(物理):過去問題のデータは全てPDF化してスタッフ誰でも閲覧可能な状態で保存して共有しています。特に東大プレや早大プレなどの大学別の模試を作成する際には、過去の出題傾向を見ないと作れませんので、データを一箇所にコンパクトに保管するのは必須です。また、日々の習慣として、良問・難問はその都度、ピックアップして共有フォルダに入れるということを行っています。

― 良問をピックアップして共有フォルダに入れるというお話がありましたが、
  そもそも良問とはどういった問題をいうのですか?

  • 小林(物理):あまり見慣れない設定ではあるが、思考力があればスパッと解けるような問題は良問だと思います。そこにちゃんとトラップもあって、迷い込んでしまう可能性もあるような問題です。つまり、同じ正解を出すにしてもきちんと理解している人はスッと解けるのですが、理解が不十分だと時間がかかってしまうような問題は良問だと思います。これは授業の題材として扱っても面白いと思います。「実はこうなんだよ」と目からうろこ的な解説ができるためです。「教科書通りのやり方でも解答できるけど理解していたら計算するまでもないよね」などです。逆に、いわゆる典型的な問題を計算量で膨らませているだけの問題は悪問だと思います。
  • 眞田(生物):単純に思考力が試される問題は良問だと思います。知識のみで解けてしまう問題は良問とは思いません。
  • 小林(物理):センター試験や東大の入試問題(物理)は良問が多いと思います。見たことのない設定で出てくることが多いです。その場で自分の持っている知識やアイディアを武器に解かなければいけません。いわゆる公式代入型の問題ではなく、思考力や今までやってきた努力がきちんと試されます。センター試験に計算問題を増やして、より考察的なテーマを持たせたものが東大の問題というイメージです。
  • 眞田(生物):東大に限らず旧帝大はどれも良問揃いだと思います(生物)。指導要領から逸脱せずに、教科書レベルの知識で解けるけれど、ちゃんと思考力を使わなければ解けない良い問題が揃っています。

― 模試を含め教材を作成する際に入試問題を研究した内容はどのように反映されているのでしょうか?

  • インタビュー風景眞田(生物):その大学の過去問を精査して、「頻出分野」「難易度」「形式」「内容(知識問題なのか・計算問題なのか・考察問題なのか、資料読み込み系なのか)」などを項目別に一覧にして、傾向をつかんだうえで予測を立てます。その後、協議・検討を経て、実際に模試やテキストに載せる問題を決めていきます。
  • 小林(物理):分野や内容の分類を行うことに加えて、問題の根底の部分、つまりどういった思考が必要になるのかという傾向のところまで突っ込んで担当者で話し合います。

― 模試などの作問の際に、難易度の調整はどのように行っているのですか?

  • 小林(物理):物理では最初の設問を簡単にする場合が多いです。例えば一つの定理だけで解けるようにするなどです。ただし、学んでほしい重要なポイントは、たとえ平均点が低くなっても、安易に難易度を下げずにインパクトを残したりもします。その分、他の大問で点を取りやすくするなど全体の調整は行いますが…

― 教材作成でその他気をつけていることはありますか?

  • 小林(物理):生徒の間違った答案などは共有するようにしています。どこでつまずいているのかといった間違いの傾向や、正答率が急激に下がったポイントなどを分析して問題作成に反映するようにしています。
  • 眞田(生物):なるべく新しい問題を取り入れるようにしています。また、日本人が行った研究・発見がNature誌などに載ったときはチェックするようにしています。例えば最近では、iPS細胞や花粉管の誘引を扱った問題で生徒の反応が良かったと思います。

― 今後の大学入試問題の方向性についてどうお考えですか?

  • 眞田(生物):生物は覚えなくてはならないことが増えてきた一方で、センター試験では知識よりも思考力を問う問題が増えています。この傾向は今後も続いていくと思います。
  • インタビュー風景小林(物理):思考力を問う今の傾向は良いのですが、それは決して知識不要ということには繋がらないと思います。知識は必要条件であって十分条件ではないというだけの話です。正確な知識に立脚した上で考察して初めて解けるような問題であるべきだし、そうあってほしいと思います。

聞き手:荒川 敬嗣