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手のひらサイズの字で勢いよく伝える 入試研究は科学の進歩を踏まえて徹底的に - 鈴川 茂 講師(生物)

生物講師  鈴川 茂

― 先生が板書をするうえで、こだわっていることは何ですか? なるべく字を大きく書く、ということですね。いつも代ゼミの黒板を3ブロックに分け、その1ブロックで1つの情報がまとまるように書いているのですが、それを5行以内に収めるようにしています。たとえば、タイトル的なもので1行、次にその内容について4行。常にその1パネルの中に5行しか入っていない状況を心がけ、ここに書く内容は全部重要だというつもりで授業しています。

インタビュー風景 ― 相当大きな字になりそうですね。 手のひらサイズですね。代ゼミの黒板には、板書しやすいように小さなマス目が入っているのですが、これを気にせず、それより大きく書いています。あくまで印象の問題ですが、小さい字で細々と書いていると、何が重要かわかりづらくなってしまいそうなので。僕としては、板書は「見せたい」という気持ちがすごく強い。これが大事だよ、っていうことを、勢いよく生徒たちに伝えたいので、大きくドーンと書いた方がいいかなと思っています。あと、5行以内と自分の中で基準を決めることによって、より内容が精選された板書ができるかなと考えています。

― 板書することとしないことは、どう区別していますか? 入試の内容に反映されるような重要なものはしっかり板書して、その背景知識などは口頭で説明するというのが基本です。僕は授業のペースが速いので、生徒たちは話を聞き逃してしまうこともあると思うんですよ。教室の様子を見て、もう一回前に戻って話し直すこともありますが、基本的には板書さえしっかり写していれば、情報をおさえられるという状況にしています。生徒たちが書き終わっているかということは毎回気にしていますね。ノートをきれいに書くことにこだわる生徒もいますが、とりあえず情報が整理された状態でノートに残っていればいいので、そんなに丁寧に書くことにこだわる必要はないよ、と話しています。すばやく書いている生徒に「君、速いね。そのペースでいいよ」などと声かけして、ノートをとる模範的なペースを生徒たちに認識させることもあります。そのように生徒たちを引っ張っていくと、彼らもだんだん速いペースに慣れて、ついてこられるようになります。

― 板書案はいつも事前に用意されていますか? 毎回授業ごとに必ず作っていきます。これは絶対書かなきゃいけないというものを、書き忘れることが一番怖いと思っているんです。様々な科学の進歩、最新の研究開発などにより、最近の生物は本当に学習の要素が増えたんですね。以前は大学で学んでいたような事柄が、今は高校の教科書で太字になって載っていることもあります。そうするともちろん、入試に対してこの用語は必要だ、必要でない、という選別を最新知見の変化とともに行っていかなければなりませんから、その都度板書の内容もチェックしていかないといけない。たとえば、iPS細胞が話題になってから、板書の内容も大きく変わりました。

― より良い授業をするためには、日々の入試研究が欠かせないですね。 授業は入試研究からフィードバックして行います。入試問題を解かずに授業をしてしまうのはゴールが見えていないということだと思います。特に近年は、問題の傾向がどんどん変化しているということがあります。知識は少なくてもいいけれど、考察力が必要な、一見解きやすく見えるけれど根が深いというような問題が増えてきている。そういう傾向を踏まえて、どう教えたら入試に役立つかということをいつも考えますね。とにかく、僕は暇があったら入試問題を解くようにしています。また、ニュースで注目されたテーマは、いろいろな角度から検証してみるなど、次の入試を見越して日々研究していかないといけません。

インタビュー風景 ― 内容がどんどん増えてくると、授業時間内に収めるのも大変ですね。 ゴールをしっかり見据えて、常にここまで進めようと意識しておくことが大切です。そのために授業後は板書案を見直して、何分でここまで話したかというようなことも記録するようにしています。90分という授業時間内に伝えたい情報を完璧につめようと準備していきますので、雑談はあまりしません。授業中は休ませないというのが僕の方針なんですね。そうしないと、生物という科目上、内容が終わらない。ただやはり現役生はそのペースだと厳しいこともあるので、生物に関わる雑談などを途中で入れて、気分転換させたりしています。性別が生じた理由を生物学的に説明するなど、幸いこの科目はいくらでも面白い話ができますので。

― 生物は図を描くのにも時間がかかりそうですね。 この仕事を始めたばかりの頃は、時間がかかるような複雑な図も板書していましたが、今は特に自分で描く必要がないものについては、テキストに載っている図のコピーをノートに貼ってもらう、というやり方にしています。その分、余った時間は話に充てようと考えますね。生物の先生は絵が上手な方が多いと思うんですが、僕は元々絵が下手なので、なるべく簡略化してわかりやすい図を描くようにしています。その方が生徒も写しやすいかなと前向きにとらえていますね。

― 生物講師として、先生がこれから力を入れていきたいことは何ですか? 生物の先生というのは、教育現場では人数が少ない方ですから、教師同士のコミュニティーがなかなか発達しにくいと思うんですよ。意見交換したり相談したりする仲間が近くにいないと、今自分がやっていることが正しいのか正しくないのかがわからなくなり、不安になることも多いと思います。それを防ぐためにも、なるべく他の生物の先生たちとのつながりを大切にしていきたい。何よりも僕はこの科目に誇りを持っていて、生物で世界を変えてやるんだ、くらいの気持ちがあるので。だから、全国の生物の先生たちと連携をとって、何か困ったことがあったら相談でき、みんなで意見を出し合えるようなコミュニティーを積極的に作っていきたいですね。予備校講師も学校教師も垣根を越えて、生物を教える者同士、助け合いながら生物教育の発展に力を入れていければと考えています。

聞き手:坂口 絵美